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生活保護者の集いコミュの「生活保護目当ての流入者が大阪市を苦しめる」という言説の虚実

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http://diamond.jp/articles/-/135238

みわよしこ

大阪市の生活保護に関するデータの分析結果が発表され、それを基に「生活保護を目的として大阪市に流入する人々が多い」という報道が一部で出た。果たして、それは本当だろうか(写真はイメージです)
生活保護目当てで押し寄せる
貧困層が大阪市の負担に?

 大阪市立大学・公共データ解析プロジェクトチーム(以下「大阪市大チーム」)は、2017年7月7日、大阪市の生活保護に関するデータの分析結果を公表した。この分析は、2016年に大阪市立大学と大阪市が締結した連携協定に基づくものであり、目的はデータ分析に基づく効果的な施策の実施であるとのことだ。

 発表された7月7日、米国・ニューヨーク市で低所得層向け住宅政策の取材・調査を行っていた私は、スマートフォンでニュースの見出しをちらりと見て、卒倒しそうになった。どのメディアのどのニュースだったかははっきり記憶していないが、「大阪市大の分析によれば、大阪市では生活保護の受給期間が増加しており、生活保護を目的として大阪市に流入する人々の多さが裏付けられた」という内容だったからだ。

 そもそも、生活保護の受給期間の増加は全国的な傾向であり、その背景のうち最大のものは高齢化だ。仕事を求める人々が流入する「寄せ場」の存在は、「山谷」を持つ東京都、「寿」を持つ横浜市、「釜ヶ崎」を持つ大阪市など、都市型貧困の特徴の1つでもある。寄せ場を必要とする理由と、生活保護を必要とする理由は、大きく重なっている。「生活保護が受けにくい」と広く知られている大阪市に、わざわざ生活保護そのものを求めて流入する人々が多数いるとは、あまり考えられない。

 大阪市立大学は、日本の貧困研究の一大拠点の1つだ。今回の研究チームの教員たちも、貧困研究における定評ある実績で広く知られている。その大阪市立大学が、そんな研究成果を発表したとは、世も末だ。ネットスラングで言えば「gkbr(ガクガクブルブル)」――。しかし、なんとか気を取り直し、大阪市大チームの発表資料に目を通した私は、まっとうな研究がまっとうに行われていることに安心できた。

 今回は、大阪市大チームが何をどう検討したのか、発表資料に何が書いてあるのかを中心に、生活保護の「いま」をデータから眺めてみたい。しかしその前に、地球のほぼ反対側にいた私を「ガクガクブルブル」とさせたメディア報道に、ツッコミをさせていただきたい。

大阪市大チームの研究結果とは?
報道に見る「ビッグデータ」の誤用

 おそらく、私がチラリと見て卒倒しそうになったメディア報道は、NHK関西による7月7日の報道ではないかと思われる。

 まず、「生活保護をビッグデータで分析」というタイトルが、強い目眩を誘う。車椅子に座っている私の場合、目を回しても転倒はしないのだが……。「ビッグデータで分析」とは何だろう?「ビッグデータ」とは文字通り、巨大な量のデータを指す用語だ。データそのものは分析の道具ではない。

 さらに、本文の「大阪市立大学の研究チームが大阪市の生活保護に関する情報をビッグデータの手法で分析した」という記述に、頭がクラクラする。というのは、「ビッグデータの手法」という記述そのものが、あり得ないものだからだ。

「ビッグデータ」を「ビジネスパーソン100万人の身長・体重」と具体的に言い換えれば、ご理解いただけるだろう。「100万人の身長・体重の手法」は存在しない。存在するとすれば、「100万人の身長・体重」に対する分析手法であり、その人々や周辺の人々に関する見積もり(推論)の手法だ。

 NHKには、科学番組の優秀なディレクターが多数在職している。そのディレクターたちに「ちょっと、これでいいかどうか見てくれない?」と声をかけられる関係があれば、「ビッグデータで分析」「ビッグデータの手法」が日の目を見ることはなかったであろう。

 なお、翌日の7月8日に公開された産経新聞の報道では、タイトルに「生活保護のビッグデータ」を分析したとある。少なくとも誤りではない。本文には、「生活保護に関する膨大な行政データの分析結果を公表した」と記述されており、妥当かつ正確だ。本当に「ビッグデータ」と呼ぶべきものかどうか、一般の読者が何をイメージするか、慎重に検討した結果であろう。

 内容にも「ミスリード」と感じる部分はない。私は産経新聞の政治的スタンスを全く支持していないが、同社で数学記事を執筆している優秀な記者の知人の顔を思い浮かべ、この記事に心から賞賛の拍手を贈りたい。

もともと、「ビッグデータ」という用語そのものが、そもそも何を指しているのか意味不明に近い用語ではある。とりあえず「その時期の通常のパソコンでは扱いにくい規模のデータ」と考えておけば大きな誤りにはならないのだが、今回の大阪市大チームの分析は「ビッグデータ」と呼ぶべきかどうかが微妙なのだ。

 というのは、対象は生活保護世帯主たち数万人(注)規模(世帯員については分析していない)であり、分析の複雑さは「各人の身長・体重・年齢とその関係」程度だからだ。通常、データサイエンスの世界では、この程度のデータ量、分析の複雑さ、分析の総量を指して「ビッグデータ」「ビッグデータ分析」と呼ぶことは少ない。大阪市が大阪市大に提供したデータそのものは、紛れもない「ビッグデータ」であったのかもしれないが。

(注)大阪市大チームの発表資料では、「約15000〜25000世帯」という数値が示されているけれども、データ量や分析の複雑さを考える場合に注目する対象は桁なので、「数万人規模」と記述した。

「マグネット層」と「トランポリン層」
生活保護に関する言説のまやかし

 では、内容の方はどうだろうか。

 メディア報道の多くが問題視したのは、「生活保護の受給期間増大、特に女性や子どものいる世帯で受給が長期にわたりがち」「生活保護を目的として大阪市に転入していると見られる人々が多い」という2点だ。

 今回、大阪市大チームが行った分析は、2005年、2010年、2015年に大阪市内で生活保護を利用していた世帯主たちに対し、それぞれの特徴を明らかにし、「福祉のマグネット」機能、「福祉のトランポリン」機能を検証したものだ。

「福祉のマグネット」とは、福祉制度の充実した地域が、福祉を必要とする人々に対して「引き寄せ力」を発揮するため、福祉支出の増大を招く現象のことである。たとえば「子どもを持ちたい共働き世帯が、保育園の充実した地域へと転居する」という当然の選択も、「福祉のマグネット」現象と言えなくはない。また「福祉のトランポリン」とは、福祉を必要としない状況に再度押し戻す機能のことである。

大阪市大チームの分析では、大阪市民になった日から半年以内に大阪市で生活保護を利用し始めた人々を、「福祉のマグネット層」とした。大阪市民になってから半年以内に生活保護を利用し始めた「マグネット層」の人々は、少なくない。さらに1ヵ月以内の生活保護利用も目立つ(図表1参照)。


【図表1】マグネット層に関わる市民日(大阪市民になった日)から需給日までの期間及び推移(出典:大阪市大チーム発表資料)
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 しかし、大阪市に来た目的が生活保護利用だったのか、あるいは就労などを目的としていたものの結果として生活保護を利用することになったのかは、日数だけでは判断しにくいところではないだろうか。大阪市大チームも、この点については結論づけていない。結論づけようがないからだろう。

 大阪市大チームはさらに、生活保護を利用する人々の中での「マグネット率」を算出した。2015年度で見ると、「マグネット率」は男性で19.8%、女性で10.6%。「マグネット層」の内訳を見ると、男性では若年・単身の「その他世帯」、すなわち障害者でも傷病者でも高齢者でもない単身者が多く、26.6%を占める。女性では単身障害者世帯が最も多く、マグネット層の19.0%を占めている。

大阪で生活保護受給を始めた
人々の目的は、結局のところ不明

 私には、これらの結果から「生活保護を求めて大阪市に来た」と結論付けるのは、早計すぎるように思われる。2010年と2015年の比較では、マグネット層・非マグネット層ともども、3分の2は生活保護から脱却しているからだ。もしも大阪市に来た目的が生活保護だったのなら、「マグネット層は生活保護から脱却しない」という結果となるはずだからだ。

 ただし2010年は、まだリーマンショック(2008年)の影響が残っていた時期である。マグネット層・非マグネット層で差が見られなかった理由の1つは、もしかすると「2010年に大阪市で生活保護を利用し始めた人々は、景気回復とともに生活保護から脱却しやすい状況にあった」ということかもしれない。

 いずれにしても、「大阪市に来た目的は生活保護を利用するため」と結論づける根拠があるとは言えなさそうだ。大阪市大チームの資料に、このように結論づける記述があるわけではない。結論めいたものは、「(大阪市は生活保護費の)全額国庫負担を求めてもよい数値的根拠になるかもしれない」という一文だけだ。これは、長年にわたって指摘されてきた「貧困問題が深刻な大都市に対して国は予算面で厳しすぎる」という積年の問題、大阪市が困惑し続けてきた問題そのものである。

また、地方からの低所得層の流入を受け止めやすい大阪市の状況についても検討が行われているが、「マグネット層」問題の中心が単身男性であること、生活保護からの脱却理由が主に死亡(29.0%)と失踪(23.4%)であること、したがって「(マグネット層が大阪市の生活保護受給者の)増加要因を形成しているとは言い難い」という結論が述べられている。

 専門家の研究をメディアが正確に伝えることは、一般的に難しい。しかし、NHK関西の「転入して6ヵ月以内に生活保護を受給していることから生活保護を目的に大阪市に引っ越してきたとみられる人たちは平成27年度に男性受給者の19.8%、女性受給者の10.6% にのぼることもわかりました」という報道は、「大学の発表資料や論文に目を通すわけではない大多数の視聴者、読者のためにこの研究を伝えた」と言えるだろうか。

 自分自身の研究がこのような扱いを受けたら、私ならそのメディアに怒鳴り込むかもしれない。少なくとも、不正確である可能性を示すツイートくらいはするだろうと思う。
 
 そもそも、よりよい保育園環境、学校、親の介護を求めて自治体を選ぶこと自体は、誰にでもあり得ることだ。「福祉のマグネット」は、あらゆる福祉を対象としている。「よりよい生活保護」で自治体を選んで、何が悪いのだろうか。

母子世帯の保護脱却率は
生活苦を考えれば低くない

 最後に、「福祉のトランポリン」機能(就労による生活保護からの脱却)に関する検討を紹介する。対象は「働けるのに働かずに生活保護に甘える」とされがちな「その他の世帯(世帯主が障害者・傷病者ではなく20〜64歳、母子世帯でもない)」の世帯主たちだ。

 もっとも人数で言えば、生活保護から脱却する理由で最も多いのは「死亡」だ。ケースワーカーの世界には「死亡自立」というスラングがある。生活保護からの脱却だけを「自立」とする考え方に対する痛烈な皮肉だ。もちろん大阪市大チームは、就労による生活保護脱却だけを「福祉のトランポリン」と捉え、データを分析した。

 分析結果は、男性、女性、年齢別で示されているのだが、女性はデータ数がそもそも少ないため、グラフに「一般化は危険」「参考値」と示されている。研究者たちは、公開前からデータの独り歩きに対する危機感を抱いていたのだ。

実績では、就労により生活保護を脱却できる人々の比率は、就労可能な人々のうち20%程度。必要な期間は23.1ヵ月となった。「働けるはず」とされた人々に対して就労指導を重ねれば、全員が生活保護から脱却できるわけではなく、脱却の成功率は20%程度なのである。また、55〜64歳の単身者では就労による生活保護脱却が困難になるが、若いからといって脱却しやすいわけではない。

 母子世帯では、脱却率の平均は17.4%となっている。母子世帯に特有の困難の数々を考えると、全体平均の約20%と比べて「低い」とは言えないだろう。最も脱却率が低いのは34歳以下(15.6%)となっている。この年齢層では「若年で母親になり、充分な教育を受けておらず、就労が困難」「幼少の子どもを抱えており、就労が困難」など、さまざまな可能性が考えられる。今後の検討に期待したい。


【図表2】年齢のトランポリン機能率(出典:大阪市大チーム発表資料)
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報道の意味自体を疑われると
メディアは自らの首を絞める


本連載の著者・みわよしこさんの書籍『生活保護リアル』(日本評論社)好評発売中
 大阪市大チームは、このほか「なぜ、日本の生活保護受給は長期化しやすいのか」に関する多面的な検討も行っており、理由を「貧困の子ども化・女性化・高齢化」、必要な対策を「政策分野横断的な対応」とする検討も行っている。私は最後まで読んで、「貧困研究の大阪市大ブランドは健在だった」とホッとしたのだが、心の中でツッコミながら全45ページの資料と数十枚のグラフ全部に目を通す余裕と気力と根性は、誰にでもあるわけではないだろう。

 メディア各社には、より慎重に、より正確に、よりわかりやすく伝える努力を、これまで以上にお願いしたい。「報道する」「伝える」という仕事の意味そのものが疑われるようになれば、最終的に締め上げられるのは自分自身の首なのだ。

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