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夏の日の物語 (オリジナル小説)コミュの待ち合わせ

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木漏れ日差し込む、昼下がりの校舎。
何気ない日常。
擦れ違う、人、人、人。
廊下を歩く俺。
女子と擦れ違う度、視線は自然とその子の顔へ向かう。
そう、無意識に。
そして、心の中で呟くのだ。

「そんな訳ないか・・・」と。

今、学校中がザワついている。
誰もがその話題で口を動かしている。
そりゃ無理もないよな、人が一人飛び降り自殺したんだから。

「ニシムラ カナが夜の校舎から飛び降りたんだって」

「誰?それ?」

「ほら、3年2組の・・・存在感ないヤツ」

「いたっけ?・・・うーん・・・2組のクラス写真、後で見せて貰お」

耳に入ってくる噂話。
俺の神経が少し苛立ち、そして少し罪悪感に蝕まれる。
おっしゃるとおり。
カナは口数の少ない、存在感の無い子だった。
何処にでもいるその他大勢の、隅の隅に隠れてしまうような子だった。
そんな子だった。

「トモキ!」

俺の肩をポンと叩く女友達、ミカ。
急な事でビクッ!と反応するが、俺は平然を装う。

「よ、よぉ・・・ミカ」

「ニシムラさんの噂、聞いた?」

ミカは覗き込むように俺を見つめる。

「ああ、残念な話だよな・・・」

カナが存在感の無い人間だとするなら、俺は逆に存在感のある人間に相当するだろう。
自分でいうのもなんだが、俺はそういう人間だったんだ。
だからこそ、こんな結果になったのかもしれない。
そう、俺とカナは付き合ってた。
愛し合ってたんだ。

だけど、俺はカナが彼女である事を隠し通した。
妙なプライドが、ちっぽけなプライドが俺の身体を縛りつけ、学校では視線さえ合わせなかった。
そして、まるで罪を犯したであろうが如く、それを隠し通そうとしていた。
好きなのに、好きだったのに。


「トモキ・・・?どうしたの?深刻な顔して」

ミカが心配そうに言葉を投げ掛ける。

「ん・・・?いや・・・何でも無い・・・ゴメン・・・」

最近、思う。
カナはまだいるような、この校舎にいるような気がしてならない。
だからまた女子と擦れ違う度、視線は自然とその子の顔へ向かってしまう俺がいる。

「カナ・・・」

俺は誰にも聞こえない小声で呟いた。

その夜、俺は学校へと足を進めていた。
そして、誰も居ない校舎へと靴音を鳴らす。
誘われたのか、自分から来たのか・・・どっちだっていいさ。
これは『待ち合わせ』なんだから。


カツーン・・・カツーン・・・


廊下の奥から俺以外の足音が木霊する。

「ゴメン・・・随分、遅れちまったみたいだな」

俺は少し苦笑いで呟いた。
薄暗い月明かりを背に、暗闇でカナの表情は見えない。
怒ってるのか、笑ってるのか・・・。

カナと近づく程、俺の中のちっぽけなプライドが崩れていく。
涙と共に。

そして、二人は再び廻り逢う。
生と死の狭間という楽園で。

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