＜はじめての夜、２度目の朝、３度目の冬＞
１９７０年の秋の夜、僕は小学６年生で深夜放送に興味をもっていた。
深夜といっても小学生だったので１２時前の、そう１１時から１２時の間の心地良い時間だったと思う。
ナショナルのワールドボーイというラジオを買ってもらっていて、それにはスリープタイマーという当時としては画期的な機能がついていた。
僕は毎夜が待ち遠しかった。
佐良直美の「フォークビレッジ」、モコ、ビーバー、オリーブの３人娘が話す、平凡パンチ提供の「パンチパンチパンチ」、渡辺貞夫がＤＪをつとめる「ナベサダとジャズ」などの番組を暗闇の中で聴きながら眠りにつくだけで幸せだった。なんだか友達とは違って、大人の仲間入りをした気分だった。
そんなある夜、いつものようにスリープタイマーをセットして暗闇の中でイヤホンをして聴いていると、今思えば朝日ソノラマの宣伝だったのか平凡パンチで取り上げられたから「パンチパンチパンチ」の中で流されたのかわからないが、♪私は今日まで生きてみました、時には誰かの力を借りて♪と変わった唄が流れていた。
闇の中でちょっと不気味な気分だった。その頃は兄貴の影響でグループサウンズとかポップな歌謡曲とか好きでビートルズのレットイットビーのシングル盤をリアルタイムで買ったりしていたから。
次の日親友の、その後ブラックエンペラーという暴走族に入ってしまい僕とは違う世界の人になってしまったナカヤマ君が♪私は今日まで生きてみました♪っていう唄知ってる？と聞くので、「ああ知ってるよ！」と答えた。なーんだ皆知ってたのかという気持ちになりちょっとがっかりした。
その年はいろんなことがあった。万国博覧会で大阪へいったり、怪我をして学校を休んで、テレビをみていると三島由紀夫という恐そうな人が何かを叫んでいた。
僕には自決という言葉の意味が今一わからなかった。知っていたのは自殺という言葉だった。僕はそんな頃のある夜に「よしだたくろう」という人をはじめて知った。
それからしばらくそのことは忘れていた。
もう中学生になっていたある日曜日の朝、ロイジェームスがＤＪをつとめる、「不二家歌謡ベストテン」というニッポン放送の番組で上位の方に「結婚しようよ」がランキングされて、ぼくは何故かペドロ＆カプリシャスの「別れの朝」といっしょに当時、父親が持っていた、ソニーのオープンリールのテープレコーダーで録音した。
はじめてランキングされて、「よしだたくろう」という人の紹介を聴き、小学生の時の記憶が蘇り、あまりにも曲のトーンの違いによるギャップがあり、僕にとってはインパクトが大きすぎた。
それが拓郎の曲に出会った２度目の朝だった。
当時、何故か白いガットギターを買ってもらったばかりで、チューニングもまともにできない頃だった。なぜ白いガットギターかというと、毎週日曜日の昼に土居まさるのＴＶジョッキーを見ていたのと１９７８年にウィンドサーフィンを始めたり、ディスコに行ったり、１９８３年に広告代理店に入ったりするのと同じようなわけのわからない理由だったと思う。
その白いガットギターで僕は必死に練習した。サルビアの花、戦争を知らない子供たち、etc.
そう、僕はまだ拓郎の曲まで到達していなかった。
正確にいうと当時の僕にはギターをはじめてくぐっていく関門がちょっと前の「フォーク」だったのだ。
なんとかアルペジオができるようになった頃、１９７２年になったばかりの冬に、家にパイオニアの４チャンネルステレオがやってきた。
僕は男ばかりの３人兄弟の末っ子だったので何のレコードを買うのかあまり権限がなかった。
サイモン＆ガーファンクルと拓郎の「ともだち」の２枚のLPレコードを買った。僕はお金をだしていないから何も言えなかった。が正解だったのだ。
あのレコードのMCを何度も聴いているうちに拓郎のキャラクターが少しずつ見えてきたのだった。今でもあのLPを聴くと寒い冬にガスストーブにやかんをおいて、こたつに入りながら勉強するふりをして、毎日兄貴と何度も４チャンネルステレオで聴いた夜を思い出す。
そうして「結婚しようよ」がヒットして、春が過ぎ、夏を迎える頃、「旅の宿」への大ヒットへとつながっていく。
僕のギターも少しずつ上達していった。当時の新譜ジャーナルも拓郎の記事が増えていった。
当時はお小遣いが決まっていたため、限られた予算の中で少しずつ拓郎のレコードを買っていった。
夏には「元気です」が発売になり、世間では拓郎が一気にブレイクした。それでも僕らは「人間なんて」「青春の詩」を買ったばかり、タイミングをはずして、その後やっと「元気です」を買った。
そんなブレイクした１９７２年の暮れ、僕の１４回目の誕生日に親からもらったプレゼントとは別に日本という国が経営しているメディアからもっと大切なプレゼントをもらった。
いや、文句も言わずに僕の親はきちっと受信料をはらっていたのだから当然なんだ。というかんじでその夜、１２月１２日、拓郎がテレビにでた。
ＮＨＫの歌謡グランドショーに。でも記憶にあるのは「春だったね」しかないのはなぜだろう？
そのあとのリブヤングは完璧なまでに覚えているのだが。
拓郎全盛の１９７２年の９月頃までは、まだギターは白いガットのままだし、フォークビレッジを毎日聞いてめずらしいライブのテープもよくかけてくれたし、ダンガリーのシャツはどこへいっても売りきれているし、新譜ジャーナルの拓郎のコーナーは終わってしまうし、僕たち拓郎ファンにはせわしない毎日が続いていた。
やはり本当にしびれたのは１９７３年の金沢事件からだと思う。
そんな１９７２年の１０月から始まった、土曜の夜の「気ままな世界」はリニューアル前が良かった。めずらしい試みをいろいろとやってくれて、それだけで僕は幸せだった。でも僕は僕なりにくだらない高校受験のためのセレモニーをくぐらなければならなかった。そんなストレスからますます拓郎へエスカレートするばかりで、やっと貯金をおろして黒沢楽器店で「フランシスカン」という無名のフォークギターを１万２千円で買った。
そして、その頃になって「オンステージ第２集」「朝日ソノラマ；真夏の青春」、果ては「いまです。よしだたくろう」という写真集まで手に入れた。
そんな楽しい毎日を送っていた１９７３年の５月の下旬の朝刊が僕を硬直させた。
その日の朝のことは多分一生忘れない。
そういえば拓郎関連で一生忘れないことってたくさんあるような気がする。
すべてのメディアが拓郎を敵にまわした。
そんなメディアと今、仕事をしていることに不思議な気持ちを覚える。
まるで学生運動をやってた人たちが何事もなかったように体制側にまわるように。
当時僕は女性週刊誌まで買い漁り、切り抜きをしばらくの間保管していた。捨てなければよかったと最近思う。
そして因縁の「伽草子」が発売された。
６月１日に発売されてその後釈放され、「魔の神田共立講堂リサイタル」が、今はニッポン放送の役員として活躍している亀淵昭信の「オールナイトニッポン」で流された。
そのテープは今の僕の宝物の一つなのでＭＤにもおとして永久保存にしている。毎年６月になると「伽草子」を聴きたくなるのはあのインパクトのあった１９７３年を思い出したいからなのだろうか？
その頃僕は初めての恋をした。
いわゆる初恋ということではなく、もうすこし重い気分というか胸が痛むような恋を。
そんなことできるタイプではないくらいにシャイな性格だった。
そして告白して見事ふられた。すべて拓郎のせいだと思った。
告白するまで何度も何度も「気ままな絵日記」の「失恋をする喜びは」の部分を読み、自分を納得させていた。
そんな熱い夏も終わり、告白した年上の女性に「受験勉強がんばるのよ！」と言われ重い気分で秋を過ごしていった。
秋から冬へ、「ライブ７３」がまたもや僕たちを盛り上げてくれた。
あの日１１月２６日〜２７日のことはよーく覚えている。そうその夜は家で兄貴に特訓を受けていた。
あまりにも拓郎に没頭しすぎたためにそろそろ取り返しがつかないくらい成績が下がっていたのだった。
数学なんかの問題集をやり、しごかれながらも頭の中は、「ああ今ごろはサンプラザで何の曲をやってるのだろう？」
そんな拓郎ファンにとっては重要な１９７３年も終わる頃、その伝説のライブアルバムは発売日を迎えた。
針を落とした瞬間、ぶっ飛んだ！はじめの２曲は完璧だった。
あとで聞いた話、当時パーソナリティがムッシュに代わったフォークビレッジでほぼ全曲を流したことを知らない僕はレコードだけがすべてだった。
興奮したまま１９７４年を迎え、無事高校受験も終わった。
高校に入りお祝いにエレキギターとアンプを買ってもらい、しばらく時代の流れとしてレッドツェッペリンやディープパープルなどをコピーしたりしていた。
拓郎のことはすでに生活の一部になっていたので新しい音楽なども積極的に聴いていった。
多分拓郎がボブディランを生活の一部と思うように。
そして唯一ギターの弾けるフォーク研究会というサークルに入り、フォーク、ロックなど多様な音楽傾向をもった奴等と知り合っていった。
そのロックバンドをバックに、まるでボブディランとザ・バンド、あるいは岡林とはっぴぃえんど、あるいは拓郎とリトルモアヘック、拓郎と井上バンドのように３年後にコンサートで、「よおこけしたWITHクレスト」というように自分のオリジナルをロックバンドをバックに演るとは全く考えても見なかった。
そこでは文化祭の他に６月と２月に定期コンサートがあった。
取り急ぎ、６月に向けて、誰とやるのかを含めて、練習に向かった。
結局、その後つま恋にも一緒に行った、イシワタ君と拓郎の曲を３曲やることになった。
「どうしてこんなに悲しいんだろう」「ともだち」を僕が唄って、「されど私の人生」をイシワタ君が唄った。
その頃、拓郎は愛奴をバックに春のツアーに出ていた。
僕たちは秋のツアーのチケットを一緒に買いに行って、１０月３１日の渋谷公会堂でのリサイタルを待ちわびた。
そのちょっと前に「オールナイトニッポン」がはじまり最初の２〜３ヶ月は興味のない曲以外は全て、ＭＣをメインに録音していた。
テープ代もあまりないのでいろんなテープにつぎはぎで録っていたから今になって整理するのが大変になってしまった。
渋谷公会堂自体はそれ程広くないのでどの席からでも充分見ることができた。
一曲目は「おろかなるひとり言」で幕が開いた。
突っ張った時代を経て、大変な時代も経験し、ボブディランのアメリカ公演を見てきたばかりでほとんどコピーしてきたようないでたちで登場したのだが、本当にめちゃくちゃかっこ良かった。
弾き語りの「落陽」「リンゴ」も味があってすごく良かったのを覚えている。「人生を語らず」が発売されたばかりでアルバムを中心にした構成だった。
それが僕が生で拓郎を見たはじめての夜だった。
その頃は頻繁にテレビにでていた頃で、今と違って唄ってばかりいたと思う。ミュージックフェア、歌謡最前線。その勢いで歌謡大賞とレコード大賞の２本をかっさっらっていった。
僕はますます深みにはまっていき、どうしても「マスター」という拓郎がデビュー当時の頃使っていたギターが欲しくなってバイトをしていた。
当然ギブソンＪ４５もマーチンＤ３５も買えるわけがなかった。
カワセ楽器へ５万円を持っていったのだが３ヶ月待ちと言われていまい、根性で待つことにした。
髪の毛も伸び肩まで差し掛かり毎日が楽しくてしょうがない頃、ギターも少しずつ上達していき、「マスター」も手に入れ、原宿を毎週末訪れ、「ペニーレーン」でオレンジジュースを飲み、拓郎が来るのを待ち続けた。
あの店のオレンジジュースは絶品だった。
今思えば１００％果汁だったのだ。
当時、１００％果汁のオレンジジュースをだす店は限られていた。
値段も当時で５００円。
普通の喫茶店でコーヒーが２００円、セブンスターが１００円か１２０円の頃。
しかしそこで拓郎を一度も見ることはなかった。
そうして高校２年になりロンドンブーツを履きだし、初めての公会堂での大きなコンサートを仲間と企画した。
チケットを売りさばき、プロが使うようなＰＡを借りたりして、結局、イシワタ君と組んで他にもドラムとベースも入れて、最悪の「落陽」をやって大恥をかいてしまったのだった。
そんな１７歳になる夏につま恋があり、僕たちは完全にブレイクし、
２度目の拓郎を見たのだった。
明け方、拓郎が失神寸前になって幕を閉じた瞬間に東に昇ろうとする朝陽をみて僕たちは涙を流し続けた。
その夏のサークルの合宿では３日３晩、人間なんてをえんえんと２時間以上やったりして、相変わらず素敵な毎日を過ごしていた。
そうしてつま恋の興奮がさめた頃の秋の夜、その頃隔週にＤＪをつとめていたオールナイトニッポンで拓郎が突然離婚宣言をした。
僕はインスタントラーメンを作っていて、もうすこしで熱い鍋を落とすところだった。
そうした大胆さが彼の凄いところなんだとしみじみ思う。
その年の秋もあっという間に過ぎて、１２月には３億円事件の時効が成立し、僕が１７歳になった直後のクリスマスの日、イシワタ君とユイ音楽工房の恒例の「来年もよろしく」コンサートに行った。
渋谷公会堂には全席につま恋ステッカーとショートケーキ（一個）が置かれていた。今では考えられないことだと思う。
よく保健所が許したものだ。
離婚直後初めてのステージ、つま恋以来初めてのステージ、ファンは盛り上がり過ぎていた。
しかし拓郎ははっきりいって超がつくほど機嫌が悪かった。
あまりにファンがうるさかったので拓郎は「もういいよ！」と言い、（もういい加減静かにしてくれ！という雰囲気）
それでも本当に今、思い出してみても過去最高の感情移入されたマーチンＤ３５ １本で「僕の唄はサヨナラだけ」を唄いだし、そこにいた全員がその時の拓郎の重い気分を噛み締めていた。
特に「キライだよね、君は」のフレーズはものすごい迫力だった。
この後常富さんのマンドリン入りで「水無川」「いつか街で逢ったなら」「祭りのあと」と３曲唄った。
それが拓郎を見た３度目の、涙で目が霞むほどの感激の冬だった。
１９７０年の秋の夜、僕は小学６年生で深夜放送に興味をもっていた。
深夜といっても小学生だったので１２時前の、そう１１時から１２時の間の心地良い時間だったと思う。
ナショナルのワールドボーイというラジオを買ってもらっていて、それにはスリープタイマーという当時としては画期的な機能がついていた。
僕は毎夜が待ち遠しかった。
佐良直美の「フォークビレッジ」、モコ、ビーバー、オリーブの３人娘が話す、平凡パンチ提供の「パンチパンチパンチ」、渡辺貞夫がＤＪをつとめる「ナベサダとジャズ」などの番組を暗闇の中で聴きながら眠りにつくだけで幸せだった。なんだか友達とは違って、大人の仲間入りをした気分だった。
そんなある夜、いつものようにスリープタイマーをセットして暗闇の中でイヤホンをして聴いていると、今思えば朝日ソノラマの宣伝だったのか平凡パンチで取り上げられたから「パンチパンチパンチ」の中で流されたのかわからないが、♪私は今日まで生きてみました、時には誰かの力を借りて♪と変わった唄が流れていた。
闇の中でちょっと不気味な気分だった。その頃は兄貴の影響でグループサウンズとかポップな歌謡曲とか好きでビートルズのレットイットビーのシングル盤をリアルタイムで買ったりしていたから。
次の日親友の、その後ブラックエンペラーという暴走族に入ってしまい僕とは違う世界の人になってしまったナカヤマ君が♪私は今日まで生きてみました♪っていう唄知ってる？と聞くので、「ああ知ってるよ！」と答えた。なーんだ皆知ってたのかという気持ちになりちょっとがっかりした。
その年はいろんなことがあった。万国博覧会で大阪へいったり、怪我をして学校を休んで、テレビをみていると三島由紀夫という恐そうな人が何かを叫んでいた。
僕には自決という言葉の意味が今一わからなかった。知っていたのは自殺という言葉だった。僕はそんな頃のある夜に「よしだたくろう」という人をはじめて知った。
それからしばらくそのことは忘れていた。
もう中学生になっていたある日曜日の朝、ロイジェームスがＤＪをつとめる、「不二家歌謡ベストテン」というニッポン放送の番組で上位の方に「結婚しようよ」がランキングされて、ぼくは何故かペドロ＆カプリシャスの「別れの朝」といっしょに当時、父親が持っていた、ソニーのオープンリールのテープレコーダーで録音した。
はじめてランキングされて、「よしだたくろう」という人の紹介を聴き、小学生の時の記憶が蘇り、あまりにも曲のトーンの違いによるギャップがあり、僕にとってはインパクトが大きすぎた。
それが拓郎の曲に出会った２度目の朝だった。
当時、何故か白いガットギターを買ってもらったばかりで、チューニングもまともにできない頃だった。なぜ白いガットギターかというと、毎週日曜日の昼に土居まさるのＴＶジョッキーを見ていたのと１９７８年にウィンドサーフィンを始めたり、ディスコに行ったり、１９８３年に広告代理店に入ったりするのと同じようなわけのわからない理由だったと思う。
その白いガットギターで僕は必死に練習した。サルビアの花、戦争を知らない子供たち、etc.
そう、僕はまだ拓郎の曲まで到達していなかった。
正確にいうと当時の僕にはギターをはじめてくぐっていく関門がちょっと前の「フォーク」だったのだ。
なんとかアルペジオができるようになった頃、１９７２年になったばかりの冬に、家にパイオニアの４チャンネルステレオがやってきた。
僕は男ばかりの３人兄弟の末っ子だったので何のレコードを買うのかあまり権限がなかった。
サイモン＆ガーファンクルと拓郎の「ともだち」の２枚のLPレコードを買った。僕はお金をだしていないから何も言えなかった。が正解だったのだ。
あのレコードのMCを何度も聴いているうちに拓郎のキャラクターが少しずつ見えてきたのだった。今でもあのLPを聴くと寒い冬にガスストーブにやかんをおいて、こたつに入りながら勉強するふりをして、毎日兄貴と何度も４チャンネルステレオで聴いた夜を思い出す。
そうして「結婚しようよ」がヒットして、春が過ぎ、夏を迎える頃、「旅の宿」への大ヒットへとつながっていく。
僕のギターも少しずつ上達していった。当時の新譜ジャーナルも拓郎の記事が増えていった。
当時はお小遣いが決まっていたため、限られた予算の中で少しずつ拓郎のレコードを買っていった。
夏には「元気です」が発売になり、世間では拓郎が一気にブレイクした。それでも僕らは「人間なんて」「青春の詩」を買ったばかり、タイミングをはずして、その後やっと「元気です」を買った。
そんなブレイクした１９７２年の暮れ、僕の１４回目の誕生日に親からもらったプレゼントとは別に日本という国が経営しているメディアからもっと大切なプレゼントをもらった。
いや、文句も言わずに僕の親はきちっと受信料をはらっていたのだから当然なんだ。というかんじでその夜、１２月１２日、拓郎がテレビにでた。
ＮＨＫの歌謡グランドショーに。でも記憶にあるのは「春だったね」しかないのはなぜだろう？
そのあとのリブヤングは完璧なまでに覚えているのだが。
拓郎全盛の１９７２年の９月頃までは、まだギターは白いガットのままだし、フォークビレッジを毎日聞いてめずらしいライブのテープもよくかけてくれたし、ダンガリーのシャツはどこへいっても売りきれているし、新譜ジャーナルの拓郎のコーナーは終わってしまうし、僕たち拓郎ファンにはせわしない毎日が続いていた。
やはり本当にしびれたのは１９７３年の金沢事件からだと思う。
そんな１９７２年の１０月から始まった、土曜の夜の「気ままな世界」はリニューアル前が良かった。めずらしい試みをいろいろとやってくれて、それだけで僕は幸せだった。でも僕は僕なりにくだらない高校受験のためのセレモニーをくぐらなければならなかった。そんなストレスからますます拓郎へエスカレートするばかりで、やっと貯金をおろして黒沢楽器店で「フランシスカン」という無名のフォークギターを１万２千円で買った。
そして、その頃になって「オンステージ第２集」「朝日ソノラマ；真夏の青春」、果ては「いまです。よしだたくろう」という写真集まで手に入れた。
そんな楽しい毎日を送っていた１９７３年の５月の下旬の朝刊が僕を硬直させた。
その日の朝のことは多分一生忘れない。
そういえば拓郎関連で一生忘れないことってたくさんあるような気がする。
すべてのメディアが拓郎を敵にまわした。
そんなメディアと今、仕事をしていることに不思議な気持ちを覚える。
まるで学生運動をやってた人たちが何事もなかったように体制側にまわるように。
当時僕は女性週刊誌まで買い漁り、切り抜きをしばらくの間保管していた。捨てなければよかったと最近思う。
そして因縁の「伽草子」が発売された。
６月１日に発売されてその後釈放され、「魔の神田共立講堂リサイタル」が、今はニッポン放送の役員として活躍している亀淵昭信の「オールナイトニッポン」で流された。
そのテープは今の僕の宝物の一つなのでＭＤにもおとして永久保存にしている。毎年６月になると「伽草子」を聴きたくなるのはあのインパクトのあった１９７３年を思い出したいからなのだろうか？
その頃僕は初めての恋をした。
いわゆる初恋ということではなく、もうすこし重い気分というか胸が痛むような恋を。
そんなことできるタイプではないくらいにシャイな性格だった。
そして告白して見事ふられた。すべて拓郎のせいだと思った。
告白するまで何度も何度も「気ままな絵日記」の「失恋をする喜びは」の部分を読み、自分を納得させていた。
そんな熱い夏も終わり、告白した年上の女性に「受験勉強がんばるのよ！」と言われ重い気分で秋を過ごしていった。
秋から冬へ、「ライブ７３」がまたもや僕たちを盛り上げてくれた。
あの日１１月２６日〜２７日のことはよーく覚えている。そうその夜は家で兄貴に特訓を受けていた。
あまりにも拓郎に没頭しすぎたためにそろそろ取り返しがつかないくらい成績が下がっていたのだった。
数学なんかの問題集をやり、しごかれながらも頭の中は、「ああ今ごろはサンプラザで何の曲をやってるのだろう？」
そんな拓郎ファンにとっては重要な１９７３年も終わる頃、その伝説のライブアルバムは発売日を迎えた。
針を落とした瞬間、ぶっ飛んだ！はじめの２曲は完璧だった。
あとで聞いた話、当時パーソナリティがムッシュに代わったフォークビレッジでほぼ全曲を流したことを知らない僕はレコードだけがすべてだった。
興奮したまま１９７４年を迎え、無事高校受験も終わった。
高校に入りお祝いにエレキギターとアンプを買ってもらい、しばらく時代の流れとしてレッドツェッペリンやディープパープルなどをコピーしたりしていた。
拓郎のことはすでに生活の一部になっていたので新しい音楽なども積極的に聴いていった。
多分拓郎がボブディランを生活の一部と思うように。
そして唯一ギターの弾けるフォーク研究会というサークルに入り、フォーク、ロックなど多様な音楽傾向をもった奴等と知り合っていった。
そのロックバンドをバックに、まるでボブディランとザ・バンド、あるいは岡林とはっぴぃえんど、あるいは拓郎とリトルモアヘック、拓郎と井上バンドのように３年後にコンサートで、「よおこけしたWITHクレスト」というように自分のオリジナルをロックバンドをバックに演るとは全く考えても見なかった。
そこでは文化祭の他に６月と２月に定期コンサートがあった。
取り急ぎ、６月に向けて、誰とやるのかを含めて、練習に向かった。
結局、その後つま恋にも一緒に行った、イシワタ君と拓郎の曲を３曲やることになった。
「どうしてこんなに悲しいんだろう」「ともだち」を僕が唄って、「されど私の人生」をイシワタ君が唄った。
その頃、拓郎は愛奴をバックに春のツアーに出ていた。
僕たちは秋のツアーのチケットを一緒に買いに行って、１０月３１日の渋谷公会堂でのリサイタルを待ちわびた。
そのちょっと前に「オールナイトニッポン」がはじまり最初の２〜３ヶ月は興味のない曲以外は全て、ＭＣをメインに録音していた。
テープ代もあまりないのでいろんなテープにつぎはぎで録っていたから今になって整理するのが大変になってしまった。
渋谷公会堂自体はそれ程広くないのでどの席からでも充分見ることができた。
一曲目は「おろかなるひとり言」で幕が開いた。
突っ張った時代を経て、大変な時代も経験し、ボブディランのアメリカ公演を見てきたばかりでほとんどコピーしてきたようないでたちで登場したのだが、本当にめちゃくちゃかっこ良かった。
弾き語りの「落陽」「リンゴ」も味があってすごく良かったのを覚えている。「人生を語らず」が発売されたばかりでアルバムを中心にした構成だった。
それが僕が生で拓郎を見たはじめての夜だった。
その頃は頻繁にテレビにでていた頃で、今と違って唄ってばかりいたと思う。ミュージックフェア、歌謡最前線。その勢いで歌謡大賞とレコード大賞の２本をかっさっらっていった。
僕はますます深みにはまっていき、どうしても「マスター」という拓郎がデビュー当時の頃使っていたギターが欲しくなってバイトをしていた。
当然ギブソンＪ４５もマーチンＤ３５も買えるわけがなかった。
カワセ楽器へ５万円を持っていったのだが３ヶ月待ちと言われていまい、根性で待つことにした。
髪の毛も伸び肩まで差し掛かり毎日が楽しくてしょうがない頃、ギターも少しずつ上達していき、「マスター」も手に入れ、原宿を毎週末訪れ、「ペニーレーン」でオレンジジュースを飲み、拓郎が来るのを待ち続けた。
あの店のオレンジジュースは絶品だった。
今思えば１００％果汁だったのだ。
当時、１００％果汁のオレンジジュースをだす店は限られていた。
値段も当時で５００円。
普通の喫茶店でコーヒーが２００円、セブンスターが１００円か１２０円の頃。
しかしそこで拓郎を一度も見ることはなかった。
そうして高校２年になりロンドンブーツを履きだし、初めての公会堂での大きなコンサートを仲間と企画した。
チケットを売りさばき、プロが使うようなＰＡを借りたりして、結局、イシワタ君と組んで他にもドラムとベースも入れて、最悪の「落陽」をやって大恥をかいてしまったのだった。
そんな１７歳になる夏につま恋があり、僕たちは完全にブレイクし、
２度目の拓郎を見たのだった。
明け方、拓郎が失神寸前になって幕を閉じた瞬間に東に昇ろうとする朝陽をみて僕たちは涙を流し続けた。
その夏のサークルの合宿では３日３晩、人間なんてをえんえんと２時間以上やったりして、相変わらず素敵な毎日を過ごしていた。
そうしてつま恋の興奮がさめた頃の秋の夜、その頃隔週にＤＪをつとめていたオールナイトニッポンで拓郎が突然離婚宣言をした。
僕はインスタントラーメンを作っていて、もうすこしで熱い鍋を落とすところだった。
そうした大胆さが彼の凄いところなんだとしみじみ思う。
その年の秋もあっという間に過ぎて、１２月には３億円事件の時効が成立し、僕が１７歳になった直後のクリスマスの日、イシワタ君とユイ音楽工房の恒例の「来年もよろしく」コンサートに行った。
渋谷公会堂には全席につま恋ステッカーとショートケーキ（一個）が置かれていた。今では考えられないことだと思う。
よく保健所が許したものだ。
離婚直後初めてのステージ、つま恋以来初めてのステージ、ファンは盛り上がり過ぎていた。
しかし拓郎ははっきりいって超がつくほど機嫌が悪かった。
あまりにファンがうるさかったので拓郎は「もういいよ！」と言い、（もういい加減静かにしてくれ！という雰囲気）
それでも本当に今、思い出してみても過去最高の感情移入されたマーチンＤ３５ １本で「僕の唄はサヨナラだけ」を唄いだし、そこにいた全員がその時の拓郎の重い気分を噛み締めていた。
特に「キライだよね、君は」のフレーズはものすごい迫力だった。
この後常富さんのマンドリン入りで「水無川」「いつか街で逢ったなら」「祭りのあと」と３曲唄った。
それが拓郎を見た３度目の、涙で目が霞むほどの感激の冬だった。
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コメント(6)
世界少年の意味がようやくわかりました。僕はステレオマックムー♪新発売っでした。
よぉこさんが海へ帰るころやっとの「人間なんて」でした。お小遣いはゲーセンに捧げていたので弟が「元気です」を買ってきました。
プレーヤーはおこたの無いリビングにあったのでテープに録るのはライブ録音でした。ラインケーブルが無かったのです。原色百科事典で高さを出しました。ステレオが高い位置にあったのです。
僕の拓郎朗コレクションはラジオからのエアチェックがメインでして、７０年代とはきっぱりお別れだっのライブで準ちゃんを知りました。僕と同姓だとは知りませんでした。不二家歌謡ベストテンはユーミンの歌でした。ソフトエクレア風邪のセロファンで包んだ綿雲なのソッフエックッレアほっぺたにプレゼント不二家ソ〜フソ〜フソ〜フエクレア〜〜でした。
コラム１を探しに行こう！。
よぉこさんが海へ帰るころやっとの「人間なんて」でした。お小遣いはゲーセンに捧げていたので弟が「元気です」を買ってきました。
プレーヤーはおこたの無いリビングにあったのでテープに録るのはライブ録音でした。ラインケーブルが無かったのです。原色百科事典で高さを出しました。ステレオが高い位置にあったのです。
僕の拓郎朗コレクションはラジオからのエアチェックがメインでして、７０年代とはきっぱりお別れだっのライブで準ちゃんを知りました。僕と同姓だとは知りませんでした。不二家歌謡ベストテンはユーミンの歌でした。ソフトエクレア風邪のセロファンで包んだ綿雲なのソッフエックッレアほっぺたにプレゼント不二家ソ〜フソ〜フソ〜フエクレア〜〜でした。
コラム１を探しに行こう！。
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