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映画日記コミュのチョコ蔵日記【2009】

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2008年は265本鑑賞。自分でも驚くほど映画を観た年でした。
去年の目標は「良い映画に沢山出会う」でしたが、見事なほどに目標達成。
今年も素敵な映画に沢山出会えますように。

蟹座2008年劇場で観た映画ベスト10(計28本)蟹座
ペルセポリス
ダークナイト
西鶴一代女
落下の王国
隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS
私は貝になりたい
山椒大夫
崖の上のポニョ
鉛の兵隊
人のセックスを笑うな

蟹座2008年邦画ベスト20(計167本)蟹座
晩春
東京物語
隠し砦の三悪人
七人の侍
近松物語
わが町
無法松の一生
丹下左膳餘話 百萬両の壷
トッポジージョのボタン戦争
醜聞
切腹
雨月物語
椿三十郎
用心棒
風の中の子供
黒い十人の女
宮本武蔵
山のあなた〜徳市の恋
どん底
赤ひげ

蟹座2008年洋画ベスト10(計98本)蟹座
ピンチクリフグランプリ
霧の中のハリネズミ
オフサイドガールズ
話の話
ダンボ
駅馬車
プラネットテラーinグラインドハウス
未来世紀ブラジル
ローマの休日
ファンタジア

好きな俳優:三船敏郎、ティム・ロス
今年の目標:名画を沢山観る!

コメント(125)

☆3.5 不射之射

まず驚いたのが、被写界深度の浅さ。
今までここまで前後の被写体をボカしていたっけ?と、思わず他の作品を見直してしまったほど。
ピントが絞られていて、今までにない川本喜八郎!と感激したのですが
これはこの作品には必然だったのだと、見終わった後に感じました。
この焦点の狭さが、弓を射るという動作を思わせるようなものだったからです。
まさに的を絞った映像で、思い切りの良さを感じました。
髪に括ったノミが次第に大きくなっていく表現なども、巧いと思わず唸ってしまいます。
(若干気持ち悪かったけどね)
また「火宅」もそうですが、ナレーションが入る事によってグッと集中力が増します。
「道成寺」はナレーションがない事が正しかったと思いますが、これはあって正解。
人形劇の代表作が「三国志」である事からも分かる通り、川本作品は中国モチーフがよく似合う。

No.084 2009.05.27(DVD)
☆4.5 愛と希望の街

個人的には教師とブルジョワ男のエピソードに惹かれました。
まだ幼さの残る正夫と京子だけではこのテーマは重過ぎように思えるし
ここにまた新たな考えを持った大人の男女が入る事でテーマが非常にクリアに見えました。
なんだかしみったれたカビくさい作品だと思うのですが、どうにもこうにもこういうのが好きみたい。
ただ一つ、正夫が鳩の巣を壊すシーン。あそこでは母親は妹ではなく、正夫本人を抱きしめるべきだったと。
個人的にはそう思いました。
でも抱きしめてもらえなかった正夫がまた悲しくて良いのかな。
現代の風潮とは全く相容れないような作品ではありますが、どうにもリメイクが観てみたい。
正夫は松本潤が演じるのがいいと思う。絶対にハマる。言い切る。言い切っても意味ないけど。

No.085 2009.05.28(DVD)
☆3.5 転々

この作品、最初から最後まで地に足ついてない印象。
ふわふわ感でいっぱい。
実感というものが皆無。
極端な事を言ってしまうと、福原の"殺人"から曖昧で、虚実な雰囲気が漂っている。
福原とフミヤが実の父子であるかも知れないという匂わせ方も虚実感を漂わせているし
それらが全て映画が終わっても何一つ明確にならないという。
でもそれらがモヤモヤじゃなくてふわふわっていうところがこの映画の良いところ。
こーんな中途半端な終わり方なのに、心は完全にプラス方向に振り切れていた。
私は福原が殺人を犯したとは思いたくなかったし、フミヤの実父だったらいいのにって思ってたし
それに対する答えを出してくれたなかった事は、ある意味非常に心優しいラストだと思う。
現実はそう甘くないけど、この作品は「ファンタジーだよね」でまとめさせてくれるゆとりがある。
基本ゆとり否定派なんだけど、ゆとりってさ、元はこういう事だったよなぁって
なんとなく心がスーっとしたのも確か。

No.086 2009.06.01(DVD)
☆4.0 いばら姫またはねむり姫

川本作品としては、個人的にイマイチ。
けれども東西のパペット技術が融合した独特の世界観は素晴らしい。
特に主となる人形以外の表情は滑稽かつキュートなトルンカ臭が漂っているし
チェコで製作した事もあってか、人形の動きがチェコっぽい!
少なくとも川本作品ではかつて見たことのないような動きをしている。
東洋ベースの作品がやはり川本作品の真骨頂と思うけれども
東欧エッセンスを数滴含んだような東西融合の独特な世界観は素晴らしいと思う。
岸田今日子のナレーションも北欧フィールドにマッチするように、ここでも良い味を出している。

No.087 2009.06.01(DVD)
☆3.0 白昼堂々

藤岡琢也と渥美清、有島一郎の複雑で面白い関係にもう少し焦点をあてて欲しかった。
個性の強いスリ集団の奇妙さも確かに面白いんだけど
そこよりも不思議な縁で繋がる3人に的を絞ってくれていれば、あのラストがもっと光った気がします。
それもこれも渥美清の薄っぺらいキャラ造形が要因か?
それにしても倍賞千恵子の美しさと言ったら!
若かりし頃の浜崎あゆみを見るようです。

No.088 2009.06.05(DVD)
☆3.5 スター・トレック

観終わった後母親に電話して
「スタートレックって昔人形劇だったよね!超そっくりだった!」
と興奮気味に語ったんですが、どうやらサンダーバードと勘違いしていたみたい。
そんな完全無知な私でも楽しませてくれた、とっても硬派な作品。
手堅い作りで印象が良い。悪ふざけもせず、変な方向へも行かず、自己満足にも陥らず。
優等生な作品。逆に言うと打撃力が弱い。そこが非常に残念。
それでもテレビ版を知らない私が見てもなんだか既視感に陥る楽しさはある。
またエンタープライズ号とか、スポックが一人で乗り込んだジタバタしてるみたいな戦闘機とか
造形が斬新で個人的にはとても好きでした。
それから画面がものすごく観やすいのが良いです。
SWとかアルマゲドンなんかに見られるような、何がなんだか…というごちゃつきがなく、観やすい。
鑑賞中のストレスがないんです。(それもまた良し悪しか?)
たとえばドリルが地球に降ろされるシーンなんかは本気でやめてくれと思った。
なぜか唐突に地球がいとおしくなった。
(と同時に「クローバーフィールド」が頭を過ぎった。へへ)
映像の美しさ、均衡の取れたフレームは文句なしです。
ブタの手みたいなバルカン人の挨拶がスタートレック発祥とは知らなかったし
年老いたスポックがテレビ版でスポックを演じていた役者さんだとも知らなかったし
色々知らない事も多くて、往年のファンの方の半分も楽しめなかったかも知れないけど
でももしこれがシリーズ化するのなら是非とも観続けていきたいと思わせる何かがあったのは確か。
それにしてもタッタカター♪タカタッタ、タッタカタッタッター♪っていうテーマソング?
個人的にはアレがスタートレック!!というイメージなんですが
まさか私、これもサンダーバードと勘違いしている?

No.089 2009.06.06(劇場)
☆4.5 流れる

成瀬作品はまだ10本程度しか見てないけど
これが最高傑作と言ってしまってもいいんじゃないかと思う。
ちょっと考えられないくらい贅沢な作品で、頭がクラっとする。
まずはもう問答無用だけど、キャストが奇跡的。
邦画ファンにはもうたまらんものがあります。終始ニヤけっぱなし。
誰も彼もがパーフェクトに個性を発揮し、与えられたイメージをパーフェクトに演じている。
ここまで個性がぶつかり合うと、お互いを殺してしまうんじゃないかという心配もあるけど
それも全くなし!全てのキャラが最大限に活きている。凄すぎる。
特に私は山田五十鈴さん。気位の高いちょっとイジワルなイメージがあったんですが
あの斜陽をむかえる芸者屋の清貧な佇まいと見事にマッチしていて、なんとも艶っぽい。
また、着物の着方もみどころ。
久しぶりに着物を着たシーンでは、何故か帯締がズレてるんです。
こりゃ次のカットできっと直っているぞと思いながら見ていたんですが、直っておらず。
結局家に帰ってくるまで帯締はズレたままでした。
なんでなんだろうって考えてたんですが
そのズレた感じがまた落ちぶれ感を増幅させていて情けなくなるんですよね。
そういう演出だったのかは分からないので個人的な思い込みですけど、感心してしまいました。
また三味線に長唄のシーンも素晴らしいです。
特に杉村春子と合わせて三味線をかき鳴らすシーンは圧巻!芸達者もいいところ。
鳥肌モンですよ。それにあのシーンに居合わせた他の役者陣の表情も良いんです。
芸妓のたまごみたいな女の子たちのあっけに取られたような、恍惚としたような顔。
あの表情があるから、鑑賞者である私にさらなる臨場感が覆いかぶさってきます。
また、杉村春子が電話で三味線のリズムをおさらいするシーンもとても好き!
あれはまさかとは思うがアドリブか?笑いました。
芸妓を扱った映画は幾度となく見てきたけれども、これが一番面白い!
恐らく田中絹代演じる女中の存在が作品に締まりを持たせていたんだと思う。
しかし素晴らしい。男不要の、徹底的な女目線。溝口健二じゃこうはいかない。


No.090 2009.06.10(DVD)
☆3.0 みかへりの塔

尺の長さや緩急のなさが気になるし、どことなく散漫な印象を与えるものの
屋外での撮影はやはり神が宿っているとしか思えない素晴らしさ。
教室の中のシーンや家の中のシーンになると、途端に魅力を欠いてしまうのですが
外に出るともう水を得た魚のように縦横無尽に走るカメラ!と子供!
ここでもやはり、他作品同様「道」の使い方が非常に面白い。
清水の本領を発揮させる要素はやはり、道、子供、水…だと思う。
あと呼応と反復も重要ですね。
中でも驚いたのが、あのジグザグの道を子供たちが走り回るシーン。
キアロスタミのジグザグ道三部作、なかでも「友だちのうちはどこ?」のシーンを想起させる。
キアロスタミは小津が大好きと言っているらしいけれど、絶対清水の事も大好きに違いない。
そして「友だちのうちはどこ?」はこの「みかへりの塔」へのオマージュなのではないか?
すごく気になって夜も眠れないので、近いうちにジグザグ道三部作を再見しようと思います。
水路が完成したと同時に流れる水のきらめきと、それを追い走る子供たちの足を捉えるシーンなんか
幸福に満ち溢れていて、なんとも素晴らしいのですが
"不良"という一括りで描かれる子供たちに違和感を感じてしまったのでこの点数。
その括りのせいで、子供たちの魅力が矮小になってしまっている。もったいない。

No.091 2009.06.16(DVD)
☆4.5 劔岳 点の記

決して派手さはなく、とても物静かで、今の時代にはそぐわない作品かも知れないけど
だからこそ面白く、心に残ります。こういう映画、好きです。
明治村に遊びに行った時にこの映画をばんばん宣伝していて
それ見なかったら多分観ようとも思わなかった。それほど地味。
実際観てみても、地味。そして古臭い。特にカメラワークが古臭い。
けれどもその古臭さが私にはとても嬉しく
現代映画でもこんな作品が観られるんだとひどく感動しました。
『銀嶺の果て』を観た時の感動を、現代作品でも感じる事が出来たのが何より嬉しい。
過酷な登山シーンなど、今ではダイナミックに見せようと無駄に接写して撮影する事が多いですよね。
役者の表情アップでごまかしたり。
けれどもこの作品は俯瞰ショットを多用し、人がまるで黒い点のようにしか見えないシーンが多い。
壮大な雪山にポツポツと数個の点。
それを俯瞰で撮って、そのままカメラは舐めるように山の斜面を登り
最後は聳え立つ山の頂きと空を捉える大パノラマを展開する。
こういう印象的なショットが非常に多く、人間の小ささと自然の雄大さを見事ワンショットで捉える。
素晴らしいです、本当。
吹雪のシーンなどは吹雪いてくる方めがけて後ろを振り返るみたいな不自然な動きもあったし
多少映像処理が施されている部分はあったと思うんですけど、
実際そういうところを指摘して、ダメだこれって言いたかったんですけど
映画を観続けていくうちに、そんな小さい事どうでもよくなってくるっていうか
圧倒的な自然の美しさと厳しさをあそこまで見せられると、感服するしかないです。
またテーマも非常に克明で、語らずとも伝わる素晴らしさがありました。
私は未体験なのですが、登山というものが自己と向き合う行為でありながら
同時に他者との繋がりをも実感させる行為である事が明確に伝わってきます。
測量隊と山岳会という対立する組織の、交流する事なく深まる親交(また手旗が良い!)など
台詞に頼らない雄弁さも上品で良いと思いました。
また、ノブが雪崩れに遭って助けてもらった事ではなく
子が生まれた事をきっかけに変わるところなんか、上手いと思いました。
それからラスト、山頂まであと少し!というシーンで途切れる素晴らしさ。
無駄な感動シーンを一切省いた慎ましさもまた
斬新な省略法を多数見せてくれた50年代の映画に通ずるものがあると思います。
そして、やっぱりキャストも素晴らしい。
彼を褒める事には若干気が引けるんですが、香川照之さん!
デルスが乗り移ったようなシーンもありましたね。
最後に、個人的には衣装の素晴らしさも付け加えておきたいところです。
興業は見込めないような作品ではありますが、私はとっても大好きです。
後で知った事なんですが、この木村大作という監督さん、
宮川一夫さんの助手を勤め、黒澤さんとも仕事をしていたんですね!
無駄に納得!

No.092 2009.06.18(試写会)
☆3.5 レッド・サン

ここまで無国籍だと、異色というよりもはやカオスの域。
三船ちゃんが機関車からう〜ん!と伸びをして出てきた時は思わず噴いてしまいました。
どっからどう見ても、何をどう捉えても、違和感しかない!!
けれどもこれがまたなんだか見続けていくうちにしっくり来るもんだから不思議。
着物が埃っぽくなったり、騎馬シーンが出てきたりしてからだろうか。
それにしても欧米人と日本人では馬の乗り方からして微妙な違いがあったのが面白い。
あと、ラストでコマンチとタイマンはらせてもらって、ようやく見せ場が出来た三船ちゃん。
それまでの殺陣はもうなんだかグダグダでした。
恐らく本人も「あんま刀はこういう使い方しないんだけどなぁ〜」
とか思いながら演じていたんじゃないでしょうか。

No.093 2009.06.23(CATV)
☆3.5 ある映画監督の生涯−溝口健二

銀幕の中でしか見た事のない大女優たちが
普通に洋服を着て、普通の言葉を喋り、しかもそれが溝口についてというだけで相当興奮する。
最初の20分くらいまで、こりゃ150分ヤバいかも・・・と思っていたのが
入江たか子さんが出てきたあたりからもう止まりませんでした。
熱量を保ったまま最後まで見せきる勢いがあったと思います。
ただし、見ていてどことなく嫌な空気を感じたのも確か。
冒頭の、病院にズカズカ入っていくところからして不穏な空気はありましたが
この監督は少し乱暴すぎると思いました。
そもそもインタビューしている相手の話の腰を折って自分の話をし出すってのがイライラする。
これを観るほとんどの人間が、溝口健二という監督は知っていても溝口健二という人間は知らない訳で
どういうエピソードを観客が欲しているか、そういう部分をあまり考えていない雰囲気も気になる。
もっとインタビューされている人の話を聞きたいのに!!っていうフラストレーションを感じました。
それから特筆すべきは田中絹代さんへのインタビューですよね、やはり。
初めて田中さんの女優以外の顔を見られた事はなんだか嬉しいし
また女優以外の顔が、女優である時の田中さんとなんら変わらないという事にも驚愕しました。
演技をしている田中さんは、演技という枠を超えてスクリーンにいたんだと痛感する。
けれども田中さんへのインタビューは、それまで以上に強引で乱暴でした。
田中さんをあの場に踏ん張らせたものは、溝口への敬意のみだと思います。
私は田中さんの仰っていた事がものすごく解ったし、田中さんの言葉だけで充分でした。
監督の品のない誘導尋問には辟易。
またラストのガソリンスタンドのくだりも、だからどうしたとイラっとくる。
そこに哀愁なんてものは感じられないし、溝口監督への愛も感じられなかった。
この作品のインタビューに答えられた方へ、この評価点数全てを捧げます。

No.094 2009.06.25(DVD)
☆4.0 浮草

これはまさか小津パロ最高峰作品(?)、市川崑の「あなたと私の合い言葉 さようなら、今日は」逆パターン!?
奇しくもこの2作、同じ年に製作されて、キャストまでカブりまくっている。
並べてみるとかなり興味深い2作だし、崑ちゃんのパロっぷりには大いに楽しませてもらった。
けれどもこちらの方は、個人的にだけど、小津作品として面白くない。
執拗に画面に赤を配置している事でようやく小津を感じる程度。
大映・伊豆・関西弁・宮川カメラなど、小津らしさがあまり感じられない取り合わせに違和感を感じてしまったんです。
でも恐らくほとんどの人がこれらに違和感を感じるんでしょうけど
それを受け入れられるか受け入れられないかで分かれるんでしょうね。
縦横無尽に動くカメラは面白い。けれども小津作品を観ている私にはビックリしてしまうんです。
また同じ海沿いの街でも鎌倉と伊豆では全然空気が違う。
そして当然ながら同じ棒読みでも標準語と関西弁ではやっぱり全然響き方が違う。
この作品の持っている猥雑さを小津自身持て余していたのではないかとすら思ってしまう。
けれどもそれは、一つの映画として面白くない訳ではないんですよね。…難しい。
軒下の喧嘩シーンのスゲェ事と言ったらなかったし
杉村春子の、今までにない落ち着いた色っぽさにはドキっとしたし
浴衣の柄のモダンっぷりには頭がクラクラした。ラストも好き。
点数見てもらえれば分かるとおり、かなり楽しんで見た作品なんです。
でも小津作品として見たら面白くない。(しつこい)

No.095 2009.06.27
☆3.5 ある街角の物語

手塚治虫のアニメーションを初めて見ました。
キャラクタの作り方は好みのものと苦手なものが入り混じっている感じ。
それだけキャラクタ造形に対する振り幅が大きいという事なんだと思います。
またアニメーションでありながらも、決して子供に媚びるような作品ではなく
絶望と希望の匙加減が絶妙。
火の点ったポスターが舞うシーンなんかは哀しみの中にしか見出せない美しさがあります。
観終わった時の心情は「パンズ・ラビリンス」の時に近い。
大人向けのピリ辛アニメーションといった感じ。

No.096 2009.06.30(DVD)
☆2.5 おす

オス猫目線で人間の男女関係を風刺するような作品で
大人が楽しむアニメーションといった感じ。
画は平面的でまさに二次元アニメ。
先に見た「ある街角の物語」の斬新なカット割に比べると、多少見劣りします。

No.097 2009.06.30(DVD)
☆3.0 めもりい

アニメーションの利点をこの上なく発揮して作られていると思います。
アニメである必然性を感じるという点は評価したい。
けれども息苦しさを感じるテーマが、そんな愉快さを半減させています。
そのちぐはぐな感じ、大人向け、というのが手塚治虫の持ち味というのも分かるんですが
まだ足場のゆるさを感じてしまう出来。

No.098 2009.06.30(DVD)
☆3.0 乱

使い方は間違っているかも知れませんが、ニュアンスとして「仏造って魂入れず」といった印象。
世間の評価はどうなのか分かりませんが、個人的にはまだ「影武者」の方が黒澤さんらしい出来だと感じました。
「影武者」では辛うじて残っていた黒澤明の匂いが、とうとうなくなってしまった。
確かにこの「乱」も黒澤映画であるとは思うし、むしろこれがクロサワだと思う。
だからこそ私はカタカナ表記される「クロサワ」に違和感を感じるし、私は頑なに黒澤と表記したい。
そういう視点で言わせてもらえば、やはりこの「乱」からは黒澤明を感じる事が出来ない。
どこまでも真っ直ぐにリアルを追求し、どこまでも真っ直ぐに人間を見詰めてきた彼はどこに行ったのか。
彼はいつの間にか"リアル"を履き違え、人間を愛さなくなってしまったみたいです。
もちろん騎馬シーンはさすがに凄かった。あの美しい馬の群れの神々しさと言ったらなかったし
合戦での落馬シーンや落城した城内の炎や飛び交う矢の凄まじさにも瞬きを忘れるほど画面に食い入った。
けれどもそういうリアルだけを求めていた訳ではなかったでしょう、監督!とも言いたくなるんです。
彼は常に画面から漏れる嘘くささを嫌い、馴染みを求めていたと私は思っていたのですが
アフレコの笛の音や石畳に滲む血糊のわざとらしさなど、どうも私は納得がいかない。
(血糊は国宝の城での撮影だった為、どうやら光学合成らしいですが)
また登場人物の薄っぺらさにもどうした事かと頭を抱えたくなってしまいました。
脚本段階では裏切りについてなどもう少し詳細に書かれていたらしいですが
あまりに露骨な描写でモデルが誰かという事が分かってしまう程だったとか。
あれだけ人間を愛していた人だったから、不信に陥った時の落差も想像出来ますが
やっぱりそれはとても悲しい事だと思います。
志村喬もいなくなってしまった今、いよいよもってあの黒澤映画が過去のものとなってしまった気がします。
思えば、この作品を見ていても三船がこの役を演じていれば…!という気持ちが湧いてこなかった。
もちろん秀虎を三船が演じていたら、それはそれでハマっていたとは思うけれども
そう思わせてくれなかった仲代さんの演技を、むしろ素晴らしいと思う。
もしくは黒澤さんが意図的に三船を排除した結果がこれだったのかも知れないとも思う。
三船(自身の体現者)を失った事により、魂をなくしてしまったみたいだ。
(毎回未練がましく三船ネタを書いてしまってスミマセン)
また、個人的にはピーターは不要だった気がします。浮きまくっていた。
あんなにも馴染みにこだわってきた人がこんな浮いた役をなんとも思わなかったのか不思議でしょうがない。
尺の長さを感じさせない画作りや迫力は黒澤ならでは。
でもやっぱり私は悲しい。残り3作を見るのが怖いとさえ思う。

No.099 2009.07.05(DVD)
☆4.5 お早よう

類稀なる多幸感!
黒澤明にしろ、小津安二郎にしろ、溝口健二にしろ、カラー作品はイマイチな印象があります。
時代の変遷期における戸惑いや焦燥感が微々たるものであっても感じられる微妙なものが多い。
けれども今作はカラー作品特有の、時代の変遷を上手く利用した数少ない成功例ではないでしょうか。
少なくとも私はもう顔が始終緩みっぱなしで、この多幸感にいつまでも包まれていたい気分です。
同じ年制作の「浮草」とは対照的に、非常に小津らしく、このニュートラルな目線が心地よい。
このニュートラルっぷりが、激動の時代にも流される事なく
独自のスタイルを貫き通せた要因なのかも知れません。
より入り組み、奥行きを増したフレームを行き来する人々を見るだけで嬉々としてしまいました。
実のところ、引き戸が押し戸に変わっていただけで私はものすごくビックリしたんです。
あー!ドアが前後している!!ってビクっとしたんです。
それに笠智衆が家に帰ってきても浴衣に着替えない事にも驚いた。
けれどもこれはこれで昭和30年代の正しい日本の家族なんだろう。
紀子三部作が戦後まもなくの正しい日本の家族の姿であるように。
このようにその時代の正しい日本の家族をニュートラルな目線で描く小津は
はやり日本の映画監督の最高峰だと思う。
そして彼の作品は時が経つにつれ、その貴重度を増していくのではないかと思います。
また、以前「茶の味」で小津の映画には無駄が一切ないと書いた事があるのですが
奇しくもこの作品ではその"無駄"を描いている事に驚きました。
モノクロ時代の映画には無駄がなかった。本当になかった。
(挨拶を無駄というなら、それは存在していたけれども)
そしてまた奇しくも、小津生誕100年の年に公開された「茶の味」は無駄しかなかった。
そしてこの「お早よう」は日本に無駄が出始めた頃の作品なのだ。
テレビを非難している訳ではないし、もちろん無駄がいけないと言っている訳でもありませんが
これは明らかに無駄誕生の物語。
私はその誕生シーンのみを丁寧に描いたこの作品がとても好きです。
恐らくこの作品は私の両親の幼い頃ド直球の作品だと思う。
そうして、その彼らには幼い頃ド直球の作品がある事がとても羨ましい。
単なる回顧主義のようにも思えるかも知れませんが、自分にはそのような作品は多分、ない。
だからとても羨ましい。
そして、これからの日本映画界に小津のような監督が出てきて欲しいと切に思う。
石井克人監督や是枝裕和監督にはこれからも良い映画をどんどん撮ってほしいと思います。
まだ小津カラー作品を全て見ていませんが、カラー作品の中ではこれが一番になりそうな予感。
人にも薦めやすい。

No.100 2009.07.07(DVD)
☆2.0 宇宙水爆戦

微笑ましく見ていたい作品なんだけど、脚本がそうさせてくれない。
ものすごく大規模なプロットの割りに、わりとドライに話が進んでいくし
メタルーナ星でしたっけ?そこに連れて行かれたはいいが
結局何もせずに帰ってきているし、終わった瞬間は
「 だ か ら ど う し た ! 」
と壮大なツッコミを入れたくなる事請け合いです。
拉致されたのは可愛そうだけど、どうせメタルーナ星まで行ったなら何かして来いと。
少しは助けてやれよと。
単にメタルーナ星人に振り回されるだけ振り回されて糸冬 了。
こんなスカスカな脚本で映画作っちゃうのが凄い。
ミュータントの見てくれだけは可愛くて微笑ましくて良かった。

No.101 2009.07.08(CATV)
☆3.0 野獣暁に死す

仲代達矢の顔の濃さにビビる。
あれでもう少し身長があれば、イタリア人に紛れていも全然違和感ない。
また、ボスという威圧感が必要な役どころだったにもかかわらず
充分負けていなかったし、オーラもあってスゲェなーと思いました。
カイオワが仲間を増やす度に流れる軽快な音楽も心地よく
ズームアウトを多用するカメラも面白い。

No.102 2009.07.11(DVD)
☆4.0 娘・妻・母

まずは仲代達矢と原節子というカップルが凄い。めちゃくちゃだ。
この二人が並んでいるだけで異様な程の違和感を感じるんだけど、それがまたいい。
この二人の恋は成就する事なく終わってしまった訳ですが
一見、年上女の原節子が年下男子の仲代と一時遊んでみたダケという風にも見えます。
それほど原さんには、一種のオトナの女の色気があった。
清潔な貞女という今までのキャラを逆手に取ったその色気は、オーラが見える程すごかった。
だからこそなお更遊びの恋のようにも見えるんですが
私にはもう早苗の気持ちが痛いくらい伝わってきて
あの場で踊って終わらせたあの恋が、もう胸をぎゅうぎゅう締め付けるんです。
苦しくてほろ苦くて、こんな上質な失恋シーンはかつて見た事がないくらい。
そうして、そこまでして離れた恋も報われる事なく、話は二転三転する訳で…
そこが避けられない訣別を描いた「晩春」や「東京物語」との違いであり
だからこそ観終わった時のやるせなさったらこの上もない。
私はこの嫌な気分をしばらく引きずってしまったのですが
やはりそれだけ作品の完成度が高いという事でもあるのだと思います。
それにしてもラストがまた素晴らしい。
非情なほどに物悲しくもありながら、どことなく感じられる希望のようなあたたかみ。
当時の豪華キャストでこのような作品を撮ってしまう当時の世相が凄い。

No.103 2009.07.12(DVD)
☆3.0 ハリー・ポッターと謎のプリンス

なんだろう、この物足りなさ。
前作のあまりの出来の良さにデヴィッド・イェーツを大絶賛したにもかかわらず
今作のなんだか微妙な仕上がりに肩透かしを食らった感じです。
冒頭のマグルの世界でのパニックシーンだとかアラゴグの埋葬シーンだとか
あと、ケイティが呪いにかかったシーンとかもそうですね。
直接的にストーリーの核心に絡んでこないようなシーンが結構あるんですけど
映画的なスケールや視覚に訴えかける効果、
何より空想の具現化としてあれらのシーンを挿入したのは印象が良いです。
(原作ファンにとってはどうでもいいシーンに時間を割かれた苛立ちしかありませんけど)
視覚効果と言えば、相変わらずホグワーツの城内は素晴らしく
特に食堂はシリーズ1作目からずっと、何にも替え難い安堵感と包容力を持っています。
だからこそデスイーターに襲撃され、灰色の廃墟のようになるシーンの持つ破壊力は計り知ません。
そう言った素晴らしいシーンもふんだんに用意されてはいるんですが
逆にどうしようもなくくそったれな部分も同じくらい用意されていて参ってしまいます。
もうここまで来たら端折り方の不満を言う事すらナンセンスに思えてくる程なんですが、やっぱり下手。
原作と映画とでは作品の芯とする場所が違っているとしか思えない。
(映画でのシリウスの蚊帳の外っぷりは腹立たしさを通り越して脱力してしまうほどだし。)
確かに今作での3人の微妙な関係や恋愛模様、ウォンウォンwのキャラの良さなど
面白い部分は多かったです。
でも今作はサブタイトルにもあるように、謎のプリンスについてがテーマでしょ。
プリンスの正体が分かったからと言って、だからどうしたとしか思えない演出です、これは。
またスラグホーンも過去の先生たちに比べると格段にインパクトが弱い。
そうして最大の山場であるクライマックスも、及第点をあげたい出来なんですが
読み終わってからも1日泣き暮らした程のあの原作の悲壮感には遠く及ばず。
ああああああやっぱりリチャード・ハリスで観たかった!!!!
他のキャストでは前作に引き続きヘレナ・ボナム・カーターが素晴らしく良いです。
デスイーターの中に「スウィーニー・トッド」出演者がゴロゴロいるってのもなんか面白い。

実は原作の最終巻、まだ読んでいなかったりするんですが(もったいなくて読めん)
だからこそ伏線などを気にする事なく純粋な気持ちで今作を楽しめたっていうのはあります。
改めてこういう楽しみ方もありだなーと思ったので、原作未読の方にも是非見てもらいたいです。
さて。いよいよ残り最終章。
足掛け10年の超大作シリーズ、見事な締めくくりを見せてほしいと思います。

No.104 2009.07.15(劇場)
☆3.0 蒸気船ウィリー

音楽とディズニーの密接な関係がすでに出来上がっていて素晴らしい。
またあの愛くるしい動きや水しぶきの描き方、斬新な表現など
荒削りながらもディズニーの原点がふんだんに詰め込まれています。
引っ掛けクレーンがミニーのスカートをペロっとめくり
パンツにフックを引っ掛けるところが異様に可愛い。

No.105 2009.07.15(DVD)
☆3.0 ミッキーの消防夫

音と動きのシンクロはやっぱり素晴らしい。
また梯子がみずからの梯子を使って下りるとか
発想のやわらかさが随所に見られます。
ミッキーの目つきの悪さも印象的。

No.106 2009.07.16(DVD)
☆4.5 ミッキーのバースデー・パーティー

これは素晴らしい!「ファンタジア」への助走という印象。
ピアノや木琴と音楽をシンクロさせる斬新な動きや表現には参ってしまいます。
自然に体が動いてしまうような軽快さと楽しさ。
そして作品そのものを包む幸福感。珠玉の初期作品ではないでしょうか。
鑑賞中は顔のほころびを抑えきれません。

No.107 2009.07.17(DVD)
☆3.0 ミッキーの子沢山

ネズミが子猫を育てるという、なんとも倒錯的な香り漂う作品で面白い。
(そもそもネズミが犬を飼っている時点でおかしいんですけど)
ドライブ感も相当のもので、このやりすぎな感じは今のディズニーは無理でしょう。
当時と現代の世相の違いってのもありますけど。

No.108 2009.07.17(DVD)
☆3.0 ミッキーの摩天楼狂笑曲

ミッキーの子沢山同様、ちょっとやりすぎ感は否めないし
そのせいで笑えもしないんだけど、やっぱりこの動きは素晴らしい。

No.109 2009.07.17(DVD)
☆4.0 ミッキーの空の英雄

ゆうびんひこうきペドロの元ネタじゃないかと思うんですが
ペドロ同様、面白い!
雪の積もり方や振り払い方なんかも感心してしまいます。
また危険回避方法が斬新で驚愕してしまう。
ディズニーの頭の柔らかさ、思考回路の複雑さを痛感する1本。

No.110 2009.07.17(DVD)
☆3.0 ミッキーの名優オンパレード

登場する人物が当時の俳優さんたちなんでしょうけど
私はチャップリンしか分からないというお粗末さ。
そのせいか、あまり作品に入り込めませんでした。
そしてまさかの夢オチというのも面白さを削ぐ。

No.111 2009.07.17(DVD)
☆3.5 ミッキーのガリバー旅行記

巨大ミッキーが街をドスドス歩くというえづらだけで楽しくなってしまう。
それがウルトラマンよろしく怪獣と戦うとなると、心躍らない訳がない。
小人たちの動きも愛くるしい。

No.112 2009.07.17(DVD)
☆2.5 ウルトラミラクルラブストーリー

なんなんだこれは…!新人類型女子ですかこの監督。
このキャストにタイトル、女性監督…
間口の広さを感じさせる雰囲気をばら撒いているので
好きな映画は「人のセックスを笑うな」とプロフィールに書いているような
ガーリィ女子必見!的作品かと思いきや、全然違ってツンツンしている映画でした。
はっきり言って訳わからん。
女の人ってどっちかっていうと感覚で物事を捉えるというイメージがあるじゃないですか。(私だけ?)
それがここまで脳みそにこだわって、脳みそフル回転を要求させて
観終わった後もすぐには感想が出てこないような映画を撮ってるってのに驚きました。
とか言いつつ、実はものすごく感覚に頼った映画なのかも知れないとも思ったんですけど。
とにかくそこら辺の女子とは一線を画する変人っぷり。
別に変人は嫌いじゃないけど、このタイプは若干苦手かも知れない。次回作、避けるかも知れない。
松ケンの津軽弁にもへもへしたい!ってだけで観たら大変な事になりますよ!(それ私です)
あぜ道でのロングショットは面白かった。
この人直線のロングショットの間によく回転系の動きを入れるんだね。

No.113 2009.07.19(劇場)
☆3.0 東京画

東京は、いつの時代も欧米人には理解しがたい場所なのかも。
ヴィム・ヴェンダースが小津を敬愛している事はよく分かったけれども
彼は小津の本質を本当に理解しているのかと言えば、私は否ではないかと思う。
現代(80年代)の日本に多少なりとも失望した様子を見せるヴィム・ヴェンダースですが
小津はどんな時代でも東京(日本)の本質を描ききったと思うよ。
絶対に描ききったと言い切ってもいい。
そこには失望なんてものは微塵もなく、ただただそこにある風景(という名の本質)を描いたに違いない。
彼が作品に滲ませた失望に、少なからずもこちら側が失望した訳ですが
笠智衆と厚田雄春へのインタビューは非常に見ごたえがあったのは確か。
過去に思いをめぐらして、思わず涙してしまった厚田さんには参った。
その後にかぶさる「東京物語」のラストは、恐らく監督の意図とは別のところで胸にきた。

No.114 2009.07.21(DVD)
☆4.0 子供の情景

この映画のポスター・チラシを見た瞬間、何故か観なければいけない衝動に駆られました。
ポスターに写る少女の眼差しに釘付けになったからです。
劇中でもどう表現して良いのか分からないほど強い目をする少女。
バクタイと名乗るこの少女の表情といい、タリバンごっこをする少年達の表情といい
近代の日本では絶対に見る事のない子供の眼差しが、この映画には溢れていました。
特にタリバンごっこをする少年達の目には背筋が寒くなるほどの恐ろしさが宿っています。
そうして多分この作品は、子供たちにそういう表情をさせてしまった大人を批判しているのだと思います。
確かに子供は大人の模倣を繰り返す事で成長します。
だからあんな目で世界を見るしかない子供を作り出したのは大人の責任です。
けれども19歳の監督が描くこの子供たちの世界は、不自然な程に大人をまともに描かない。
子供と会話をするシーンはあっても、対話をするシーンがほとんどない。
徹底的とまではいかないにしろ、意図して大人を排除している。
特に学校の先生たちの子供に対する無関心さといったらない。
その不自然さが、この良質な作品に不協和音を生じさせているように感じます。
大人をしっかり描いてこその子供の情景ではないかと私は思いました。
それはもしかしたら監督が未だ大人とは言えない年齢だからなのかも知れません。
けれども逆に言えば、この歳で既にこれだけの作品が撮れてしまっているという事で
彼女がオトナになった時には一体どんな作品を撮るんだろうと末恐ろしくなるんですが。
またこの救いようのないラストを私たちはどう捉え、どう考えればよいのか。
あんなにも強い眼差しで戦争ごっこは嫌だと立ち向かっていたバクタイが、木の銃弾に倒れた。
そのシーンに大人も配置されている事がまた、絶望的な悲しさを増幅させます。
この言いようもない悲惨なラストに、未来を見る事など私は到底出来ません。
未来ある子供に手を差し伸べる大人の不在こそがこの映画の欠陥であり、また核でもあるという辛さ。

No.115 2009.07.26(劇場)
☆2.5 男たちの大和 YAMATO

戦争映画(反戦映画)は作り続けなければいけないと心底思っています。
でもこの映画はその立ち位置に立っていないように思えました。
戦争を経験していない私が言うのはどうかと思いますが
戦争ってもっとストイックで無機質なものだったんじゃないかな。
砲撃を受ける船上の殺戮シーンなんかは若干ビビリが入った程凄かったですが
その力の入れようがちょっとおかしく思えるというか、そこじゃないだろと。
分かりますよ。もちろん、言いたい事は。
それだけ悲惨なものだったという事を伝えたいのでしょう。
でも殺人はダメだと言って、悲惨な殺人現場を描いたところであまり意味がないと思うんです。
そもそも悪趣味です。
そういう手法を使わなくても絶対に戦争の悲惨さは伝える事が出来ます。
現に戦争経験世代が作った戦争映画は演出過多な殺戮シーンなどないように思います。
それでもこの作品よりもよほど戦争の悲惨さ、むごさが伝わってきます。
また過剰な肉親との別れなども、現代の人にも伝わりやすくする為の演出かも知れませんが
事実を捻じ曲げてまで描く必要はないと思います。
逆に、現代に話が移った際の3世代のやりとりは、描き方が浅く
ここをもっと上手に描いていれば、この作品独自の"戦争"を描けていたのではないかと思います。
今後、戦争は語り継ぐ事こそが最も大事になってゆくという
そこをもっとアピールしてほしかったです。
そしてこの作品が最も描けていなかったものは
戦争に駆り出された若者の"心の在り処"ではないかなぁと思います。
肉親との別れとか、戦友との絆とか、確かにそういう部分にも心はあったと思うけれども
友情というよりも敬意、というように、もっともっと奥の部分に心があったのではないでしょうか。
そうなんです、『太平洋の翼』でパイロットが叫んだ最期の怒り「日本の空から出ていけ!」
まさしくそういう部分だと思います。

No.116 2009.08.04(DVD)
☆3.0 日本海大海戦

戦艦三笠について知りたいなと思い、三笠の出ている映画を探してきたのですが
日露戦争について何の予備知識もない私にとっては、少々分かりづらい展開でした。
三笠の事もほとんど分からなかったし。
映画ではほとんど顔が映らない昭和天皇に対し(自分が今まで見た作品に限って、ですけど)
明治天皇は堂々と顔を出し、役者が演じるんだ!という驚きはありましたが。
という訳で、私の興味を引いたものは意外な事に「特撮」。
これまでも円谷英二の特撮は少しは見てきましたが
こんなに感動したのは初めてです。(そりゃ『キスカ』も素晴らしかったけど)
ミニチュア感をまったく匂わせず、現代のCGばりに超自然。
ミニチュアって重量感がなくて、動きが軽やかになってしまうイメージがあるんですが
この作品ではそんな軽やかな特撮が全然ない。
本当に海に浮かぶ艦隊を見ているようで、素晴らしい臨場感。
特撮を見るためだけにこの作品を観たっていいんじゃないかと思ってしまう程。
でも史実を知っていたらもっと楽しめたハズ。

No.117 2009.08.11(DVD)
☆3.0 独立愚連隊

やっぱり岡本喜八の戦争映画は一種独特だと思う。
このドライ感は他の戦争映画では味わえないものだし
これもまた戦争だと思う。
けれども戦争というものをバックヤードとしてのみ扱っている感も否めない。
ラストの死屍累々としたシーンの持つ凄みは確かにありますが
そこにたどり着くまでの推理サスペンス風味な展開からは視覚以上の凄惨さは伝わってきません。
同じ軽妙なタッチながも戦争の悲惨さが伝わってくる「血と砂」の方が良く出来ていると思います。

No.118 2009.08.13(DVD)
☆2.5 ミスター・ロンリー

画面の色使いや音楽は非常に印象的なんですが
ストーリーそのものは退屈。
頭で観る作品という感じで、そういう準備が出来ていなかった私は
結局最後まで入り込めませんでした。
一人っ子は孤独を知っているから一人になるのが怖いという話を聞いた事があります。
私はまだ孤独の怖さを知らないんだと思います。
独りの怖さを知らない自分が今は少し怖い。

No.119 2009.08.16(DVD)
☆4.0 トウキョウソナタ

すごく面白くてビックリした。いや、本当に面白かった。
もうなんだろうね。印象的なシーンの多い事。
冒頭の、開け放した窓から吹き込む雨なんかすごく良い。
これは一体何の暗示?と、カーテンの如く変に気持ちが揺れる。
ただ中盤から終盤にかけて、家族の崩壊部分を描くあたりから少しの違和感を覚えました。
なんだか着地点を見失っている!?とすら思えるほど、不自然な描写が増え
台詞もなんだか急にフィクションの香りが強くなる。
特に母親のあまりの壊れっぷりが気になるところなんですが
この一家の核は母親(妻)なのだなと思わせる事には成功しているかな。
家族の要となる核が内にこもっている以上
家族が内へ、内へ、となるのは必然なのかも知れません。
家族が再生の兆しを見せた時、父親はどうだった?
あんなに嫌がっていた清掃員の作業着で家に帰宅する。
次男が「変な格好」と言う。息子が父に目を向けた瞬間。
そうしてスクレーパーを片手に、澱みのない目で働き出す父親。
ああ、核が母親から父親へと変わるんだなと思わせる良いシーンでした。
ただ、現代の家族が抱える問題を浮き彫りにしたような形ではあるけれど
先にも書いた通り、崩壊を位置づける一連の出来事があまりにも現実離れしていて
希望を感じるラストであったにも関わらず
はやり一度崩壊した家族の再生は、本当に奇跡のようなものなのかも知れないと
少しの絶望を突きつけられた気にもなりました。
必要なのは自己再生能力だと思うので、そこを避けて描いた部分がいただけない。

No.120 2009.08.23(DVD)
☆4.5 暴走機関車

はじめは脱獄囚コンビが煩くて辛いなーと思ったし
システム室の手に汗握るスリリングな空気も
実際現場を見ていない者の反応としたら大袈裟すぎるとも思ったんですが
とにかく面白い!これに尽きる。
特に列車というフリーダムなアイテムが突如絶望の密室になるというのも面白いし
やっぱり中に閉じ込められた3人の、3者3様な人間味が心を鷲掴みにします。
極限状態に置かれた時の人間の本質を真摯に描くあたり
黒澤臭がプンプンして、個人的にはドツボ。
また正義や私欲と言った人間の根本にある感情を登場人物がぶつけ合うシーンも良い。
(列車の中だけでなく、システム室でも繰り広げられる二重感も魅力)
そして何より、ここでも遺憾なく発揮される黒澤節"性善説の力説"が圧倒的な力強さでぶつかってくる。
もちろん脚本も良いのだろうけど、監督も素晴らしかったんだと思います。
リメイクですら黒澤の良さを理解しきれず制作されるものがある中
よくここまで黒澤の意思を表現しきってくれた!と嬉しくなってしまいました。
単純に面白くて、加えてしっかり心に響く映画。

No.121 2009.09.05(DVD)
☆2.5 ICHI

とんがってるところもなければ、ガッツリ感もなく、大袈裟なCGでもあるのかと思えばそれもない。
あったのは恥ずかしくなるような青い説教臭のみ。
トーマが刀を抜けなくなってしまった理由とか
市の境目が分からない空虚感とか
なんか本当無理やり理由つけて話繋げてますって感じの煩さが気になる。
刀が抜けない理由なんて特に、そこまで大仰に作りこまなくてもいいと思った。
だって刀が抜けないってダケで充分じゃん?
何か理由があるんだなってそれだけで分かるし。
それを一から十までご丁寧に説明してくれるのが野暮ったい。
あと、市の見せ場があまりにも少ない事も不満の一つで
せっかくの女座頭市なんだから、女ならではの面白さを引き出して欲しかった。
これじゃあ別に女である必然性が感じられない。
うっわあ!座頭市って女にしたらこんな面白いんだ!っていう新しい発見が何もないんだもの。
これじゃあ単なる物珍しさのみで性別を変えたって感じにしか思えない。
綾瀬はるかは女の私から見ても超かわいいし、それだけでなんだか幸せにもなれるんだけど
殺陣もそこまで絶賛されるようなものか?と思ったし、あんま萌えポイントはなかった。
普通にしてたってかわいいもんあの子。
それから中村獅童はヒドすぎる。
キャラ設定も面白くなければ、演技も面白くない。意外性が皆無。(竹内力も同様)
音も良くないと思った。対立する組同士の決闘シーンは
どこの大戦争だってくらいすごい音を立てているし、
回想シーンに変な音を被せて三味線の音をごまかすような演出も気になった。
三味線の音はこの作品の物悲しさに非常にマッチしていたと思うので
その音だけで充分だったんじゃないかな。(綾瀬はるかの唄も不要)
せっかくの面白い設定も、脚本の未熟さで活かしきれなかった印象。

No.122 2009.09.08(DVD)

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