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詩歌全般・日本古代史・たべものコミュの滝の音は たえて久しく なりぬれど 名こそ流れて なほ聞こえけれ

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滝の音は たえて久しく なりぬれど 名こそ流れて なほ聞こえけれ     大納言公任 ( だいなごんきんとう ) 

<大覚寺に人々あまたまかりたちけるに ふるき滝をよみ侍りける 『拾遺集』・巻八・雑上>
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(大覚寺に古く伝わる、嵯峨の帝が賞でたもうたという)
滝の音は絶えて聞けなくなってから

長い年月が経ってしまっているが

その名高い評判だけは世間に流れ伝わり

いまだに聞こえてありし日の栄えがしのばれることであるよ
・・・・・・・・・・・・・・・・・
滝・流れ  音・聞こえ  たえ・流れ  はそれぞれ縁語。
「た」音と「な」音の重ね。(技巧的、形式的) 
・・・・・・・・・・・・・・・・・
滝の音は たえて久しく なりぬれど「;

「滝」は京都市右京区嵯峨大覚寺の滝。この寺は元嵯峨天皇の離宮で、大沢の池もその遺跡で、滝もあり、後世この歌によって「名こその滝」と呼ばれる。
「は」は強調の係助詞。水の涸れ、音が絶えた滝の跡を。
「たえ」は下二段活用動詞「たゆ」の連用形。
「て」は順接の接続助詞。
「久しく」は形容詞「久」の連用形。
「なり」は四段活用動詞連用形。
「ぬれ」は完了の助動詞「ぬ」の已然形で、逆接の接続助詞「ど」が接して確定条件。

名こそ流れて なほ聞こえけれ;

「名流る」は評判が伝わる意。 
「名」は評判・名声。「こそ」は強意の係助詞で、結びは詠嘆の助動詞「けり」の已然形「けれ」。
「流れ」は下二段活用動詞「流る」の連用形、しだいに伝わる意。
「なほ」は副詞。
「聞こえ」は下二段活用動詞「聞こゆ」の連用形。
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才知の勝った技巧的な歌で、当意即妙の所が取り柄で内容は特にない。ただ調べの上で「た」「と」「な」「ぬ」「な」「な」「な」と同音が繰り返されるなめらかな試みは、この作歌の目的の、むしろ大半だといってよい。
この歌は、魅力ない歌として、古来から評判が悪い。公任なら、もっといい歌がたくさんあるだろうに、という。なぜ定家がこんな駄作を入れたのであろうと、諸家あたまを絞って「た」音がつづくから良いだの「な」音の響きが良いだのと必死に良いところを探したようである。
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藤原公任(966〜1041)は、王朝の全盛時代に活躍した花形貴族の一人である。歌人・歌論家として有名。博学多才で、出自もよい。
三船の才、とうたわれている。これはある年、道長が大井川で遊んだとき、漢詩の船、音楽の船、和歌の船と分けて、それぞれの道にすぐれた人をのせた。この公任大納言はどれにもすぐれていたので、道長は
「どの船にお乗りになられるか」と聞いたという。そう聞かれるだけでも身の栄誉であろう。
公任は、「では和歌の船にしますかな」といって詠んだ歌。

「をぐら山 嵐の風の 寒ければ もみじの錦 着ぬ人ぞなき」

さすがはと人々が感じ入ると、公任は、
「いや漢詩の船に乗ればよかった、そしてこの歌ぐらいの詩を作っていれば、名声はいっそう上がっただろうに惜しいことをした」とうそぶいた。

妹の醇子が円融帝の中宮となって入内するとき、その行列が兼家の邸の前を通った。兼家の娘も円融帝の女御の一人で、さぞ醇子の立后をうらやましくもせつなくも思って見送ったであろう。公任は得意のあまり、馬を控えて、「こちらの女御はいつ立后なさるのかね」と放言、兼家側の怨みをかった。

ところが醇子には、お子はできず、兼家の娘の詮子に生まれられた皇子が一条帝として皇位に即かれ、立場は逆転する。詮子が皇太后として意気揚々と入内するとき、詮子側の女房に公任は、「お妹さんの素腹の后はお元気なの?」とやられてしまった。素腹の后、というのは「うまずめ」というよりも更に物凄い悪口である。


【作者】
大納言公任・本名藤原公任(966〜1041)太政大臣藤原頼忠の子。三船の才を称されるほどの、博学多才で、当代歌界に指導者として君臨。『和漢朗詠集』を編纂したほか『新撰髄脳』『和歌九品』『深窓秘抄』『諸国歌枕』『北山抄』『金玉集』などの編著がある。勅撰集入集歌八十八首。中古三十六歌仙の一人。

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