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カナダの歴史と政治コミュの2017年ブリティッシュコロンビア州議会総選挙

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 ブリティッシュコロンビア州議会総選挙が、5月9日に行われる。メインストリート社が4月22日に実施した最近の政党支持率調査は、新民主党44%、自由党34%、緑の党22%となり、新民主党による政権奪回の可能性が高いことが示されている。各種世論調査で与党自由党と最大野党新民主党は、2016年9月までは抜きつ抜かれつのデッドヒートを繰り広げていたが、新民主党はその後首位に立つと、8か月以上一度も抜かれていない。新民主党の支持率は、9月以降36%を下回っていない。
 だが待ってほしい。前回2013年総選挙では、投票日前日に実施された支持率調査で、与党自由党37%に対し新民主党45%という結果が出て、メディア各社は政権交代を予言したにもかかわらず、実際の得票率は自由党44.1%(49議席)・新民主党39.7%(34議席)に終わり、劇的な大逆転となったことは記憶に新しい。
 ブリティッシュコロンビア州は過去65年間、中道右派連合が一環して支配してきた。革新勢力が支配したのは13年間で、中道右派の連合が壊れた場合にのみ勝利できたにすぎない。そして今回は、中道右派連合に深刻な分裂が見られない。

 イノベーションリサーチ社は2月終わりから3月初めにかけて、ブリティッシュコロンビア州の400人以上の有権者を対象に対面調査を実施した。すると回答者の62%が「政権交代の時期だ」、69%が「BC自由党は人々の意見を聞くことなく行動している」という意見に同意した。また66%が「BC自由党のトップは、政府を自分たちの会員制クラブのように扱っている」、ほぼ同数の人が「BC自由党政権は、平均的市民のニーズを汲み上げることをしていない」という意見に同意した。
 だが同社のグレッグ・ライル社長は、有権者が明らかに自由党政権に不満を持っているにもかかわらず、それは深刻ではないと指摘する。
「与党には大いに怒っているので、もう彼らに投票しない」と回答したのは、34%だった。ライル社長は「これはかなり低い数字だ」と語る。
「人々は政府に不満を抱いているかもしれないが、それについて何か行動するだけのモチベーションがどれだけあるのか。それが、鍵となる問題だ。我々の世論調査は、怒りのレベルがさほど深刻ではないことを示したので、自由党はこれに励まされなければならない。」
 また彼は、同じ質問への答えはケベックでは46%、オンタリオでは43%、アルバータでは42%と、他州と比較しても少ないことに注目した。
「『政治がもっとましになればなあ』と、『よりよい政権を望む』には、大きな違いがある。」
 ライル社長は1996年総選挙のとき、BC自由党の選挙参謀を務めた。与党新民主党は汚職で支持率を下げており、自由党は意気盛んだったが、蓋を開けてみれば、自由党は得票率41.8%で新民主党の39.5%を上回ったものの、議席では自由党33に対し新民主党39と及ばなかった。それで彼は、今年は新民主党はより多くの票を獲得するが、自由党はより多くの議席を獲得するという、96年とは正反対の結果になりそうだと予測する。
「96年以降変わったことといえば、自由党は地方の地盤をより強固にし、新民主党は都市部で強くなったことだ。重要なことは、地方の方が1票の価値が大きいので、新民主党はより多くの票を獲っても選挙で負けることがありえる。」

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4月28日のジャステイソン・マーケット・インテリジェンス社による調査では自由党38%・新民主党37%、4月30日のイプソス・リード社による調査では自由党43%・新民主党41%と逆転したが、5月1日のメインストリート・リサーチ社による調査では自由党37%・新民主党42%、5月2日のアンガス・リード社による調査では自由党40%・新民主党41%と再び逆転し、激しいデッドヒートを繰り広げている。
 ブリティッシュコロンビア州議会総選挙が、今日5月9日に実施される。ここ20年間で最も接戦となり、大勢が判明するのは日本時間の10日夕方までもつれることだろう。

 (1) 接戦にもかかわらず自由党過半数か
 インサイツ・ウェスト社が8日に発表した政党支持率は、自由党41%・新民主党41%・緑の党17%となった。ここから導き出される予想獲得議席は、自由党45(34〜57)、新民主党40(28〜52)、緑の党2(0〜4)である(定数87)。また勝率は、自由党72.3%(多数政権64.0%・少数政権8.3%)、新民主党27.7%(多数政権24.2%・少数政権3.5%)、緑の党0.0%となる。これほどの接戦にもかかわらず、少数政権が成立する確率は11.8%しかない。
 歴史的接戦にもかかわらず、データは自由党過半数を予測する。新民主党の自由党へのリードは、2週間前には7ポイントもあった。その後新民主党は下降傾向にあり、自由党は上昇傾向にある。また自由党支持者には高齢層が多く、新民主党支持者には若年層が多い。高齢層は投票率が高いことが知られ、若年層は投票日に友人に誘われると投票しないことがしばしばある。世論調査は、自由党には強い支持者が多く、迷っている人が少ないことを示している。

 (2) 地方で強い自由党、バンクーバー島では緑の党が躍進
 全体の得票数では新民主党が自由党を上回る可能性が示されているが、地方は都市部より1票の価値が重いため、自由党がより多くの議席を獲得する可能性が非常に高い。内陸部と北部の支持率は、自由党49.6%・新民主党32.3%・緑の党15.4%と自由党が大きくリードしており、ここから導き出される予想獲得議席は、自由党26(24〜27)・新民主党5(3〜7)・緑の党0(0〜1)である。メトロ・バンクーバーの支持率は自由党37.9%・新民主党42.6%・緑の党17.2%で、ここから導き出される予想獲得議席は、自由党17(10〜26)・新民主党25(16〜31)・緑の党0(0〜1)である。
 注目すべきは、バンクーバー島である。支持率は自由党28.2%・新民主党41.9%・緑の党26.3%で、ここから導き出される予想獲得議席は、自由党2(0〜4)・新民主党10(9〜14)・緑の党2(0〜2)となる。新民主党はバンクーバー島で圧倒的な優位があるが、この地域の議席は多くはない。
 緑の党は、前回2013年総選挙で初めて1議席を獲得した。そのときの得票率が8.1%だったことを考えると、大きな躍進ではある。緑の党と新民主党が政策的に近いことを考慮すると、同党躍進によって最も割を食うのは新民主党だろう。そこで緑の党支持者が、自由党を勝たせないために新民主党に投票する「戦略的投票」に走ることもありえる。非常な接戦のため、わずかな票の動きが意外な結果をもたらすことがあり、結果は予想が難しい。
 それでもブリティッシュコロンビアの保守勢力は、高い投票率と地方における1票の重さに助けられ、歴史的に接戦をものにしてきたことも事実である。

 (3) 連立交渉で波乱の可能性
 ブリティッシュコロンビアでは、1953年を最後に少数政権が成立していない。今回は歴史的接戦のため、それほど高い確率ではないが、どの党も過半数に達しない可能性がある。
 カナダでは連立政権が成立することは稀で、第1党が少数政権を樹立することが多い。鍵を握るのは、躍進した緑の党である。新民主党が第1党になれなくても、緑の党と合わせて過半数になる場合は、連立による政権奪取もありえる。
 緑の党のアンドリュー・ウィーバー党首は、こう述べた。
「我々は全ての可能性を受け入れる。我々は連立を受け入れる。少数政権も受け入れる。我々は誰とでもともに働く用意がある。」
 ただしそれには、企業献金・組合献金の廃止が条件だという。
 だが、ブリティッシュコロンビア大学で政治学を学んだデビッド・モスクロップ博士は、慣例として首相は辞任するまでは首相の地位にあり、また副総督は総選挙後、現職首相にまだ議会の信任があることを示す機会を与えなければならないことになっていることを指摘した。つまり緑の党との交渉は、現職首相が新民主党より先にする権利があることになる。


写真:左からクリスティ・クラーク首相(自由党)、アンドリュー・ウィーバー党首(緑の党)、ジョン・ホーガン党首(新民主党)。
 (1) 敗者のいない選挙
 5月9日に実施されたブリティッシュコロンビア州議会総選挙は、即日開票され、自由党43議席、新民主党41議席、緑の党3議席(定数87)という結果になった。得票率は自由党40.8%、新民主党39.9%、緑の党16.8%で、議席と得票率の両方で信任を得たクリスティ・クラーク首相は勝利を宣言した。
「我々は得票率で勝ち、最も多くの議席を得た。そして来たる不在者投票で、我々の勝利がより強化されると確信している。」
 定数87の州議会において安定政権を築くには44議席が必要で、与党自由党は1議席足りない。法案を成立させるには他党の協力が不可欠となるが、そればかりか野党が連合すれば政権を打倒することも可能である。
 ところが得票数100票以内の選挙区は、自動的に再集計の対象となる。しかも不在者投票の票数は、まだ集計されていない。コートニー=コモックス選挙区では、新民主党のロンナ=レイ・レナード候補が10058票で当選と暫定的に発表されたが、自由党のジム・ベニンガー候補は10049票獲得しており、その差はわずか9票しかない。そのほか得票差が500分の1以内の選挙区は、裁判で再集計を求めることができ、メイプルリッジ=ミッション選挙区(新民主党候補が120票差で当選)、コキットラム=バークマウンテン選挙区(自由党候補が170票差で当選)、リッチモンド=クイーンズバラ選挙区(自由党候補が263票差で当選)は、結果が変わる可能性がある。 各党は明日にでも連立のための協議に入りたいところだが、再集計の結果次第では、自由党が過半数に達したり、新民主党が第1党になったりする可能性もあり、予断を許さない。再集計は5月22日に始まり、24日までに終わる。
 総選挙の暫定結果を受けて、新民主党のジョン・ホーガン党首は意味深長なコメントをした。
「ブリティッシュコロンビアの市民は、自分たちのために働いてくれる政権を16年間待ち続けてきた。全ての票が開票されるまで、我々はもうしばらくの間皆さんとともに待つことにする。」
 わずか3議席でキャスチング・ボートを握った緑の党のアンドリュー・ウィーバー党首も、旗色を鮮明にはしなかった。
「ブリティッシュコロンビアにとって、何と歴史的な一日だろう。」
「我々は、再集計の完了を待たなければならない。結果が判明するまで、2週間は何も決めることはできない。だが私はまもなく、ホーガン党首と会談する。それから同様に、クラーク首相とチャットで話すことになる。なぜなら我々には提示したいことが多くあり、BC州議会でそれらの考えを推進したいと考えているからだ。」
 (2) 政権の行方
 中道右派の与党自由党は、低税率と小さな政府で予算の均衡を公約した。いっぽう革新の野党新民主党は、富裕層と企業に増税し、保育所に1日あたり10ドルの助成と家賃年間400ドルの助成という画期的な公約をぶち上げた。だが新民主党と中道右派の膠着は12年も続き、いずれの政策も有権者を完全に満足させることはなかった。そして新民主党は2001年を最後に16年間政権から遠ざかり、その間3人の党首が失意のうちに辞任した。
 緑の党は、第三の道を提示した。ウィーバー党首は、自由党の予算案に2度賛成投票した。だが資源開発と環境問題では自由党の批判に回り、キンダーモルガン・パイプラインに反対した。また先住民との新たな関係について新民主党と合意し、自由党案に対抗した。彼は「緑の党と自由党との政策上の類似」ゆえ、クラーク首相はしばらくの間政権を維持できると語った。
 ブリティッシュコロンビア大学で政治学を教えるリチャード・ジョンストン教授は、クラーク首相は再集計までは首相でいられ、またその結果に関係なく、政権を維持する優先的権利を与えられると説明するが、政権の行方は流動的で不確定だという。
「確実に言えることが一つある。緑の党のウィーバー党首は、相当な力を持つポジションにいる。彼がクラーク首相を支持しなければ、彼女はおしまいだ。ボールはウィーバー党首のコートにある。なぜなら、彼がパワーバランスをつかさどっているのだから。過半数を得る唯一の道は、彼がどちらか一方を支持すること以外にない。」
 クラーク首相にとって最初の難関は、議会召集後のスローン・スピーチ(所信表明演説)である。自由党が緑の党と合意に達しなかった場合、首相は新民主党と緑の党の野党連合に、内閣不信任できるものならやってみろと挑発することができる。これは1986年にオンタリオ州で、野党自由党と新民主党が連合し、進歩保守党少数政権を打倒したときと酷似している。
 だがジョンストン教授は、少数与党政権は短命な傾向があり、任期いっぱいまで続かないことが多いことに注目する。自由党は、早期の不意打ち解散・総選挙で優位に立てるという。
「自由党は潤沢な資金を持ち、早期の再選挙に打って出る余裕のある唯一の党である。換言するとウィーバー党首は、現有3議席を保持するため、早期の解散・総選挙は避けたいだろう。」

 (3) 世論調査機関、雪辱を晴らす
 自由党と新民主党が抜きつ抜かれるのデッドヒートを繰り広げるなか、4年前の総選挙で予想を大ハズレさせた世論調査機関各社は、雪辱を期していた。フォーラム・リサーチ、インサイツ・ウェスト、メインストリート・リサーチ、イプソス、アンガス・リードの大手5社は総選挙の最後の週に調査を実施し、新民主党の得票率を40か41%、自由党の得票率を39か40か41%と予測し、おおむね的中させた。自由党過半数を予測した機関があったが、1議席足りなかった。緑の党の得票率は、「戦略的投票」のため難しかったが、5社のうち4社が15か17%と予測し、おおむね的中させた。前日8日に実施したブリティッシュコロンビアのインサイツ・ウェスト社は、自由党41%・新民主党41%・緑の党17%と予測し、最も近い数字となった。
 インサイツ・ウェスト社のマリオ・カンセコ副社長は、次のように述べた。
「我々は、自社の予想に非常に満足している。これは4年前に始まったプロセスで、オンライン・メソッドを用いてカナダとアメリカで23の正しい予測に導いた。」
 世論調査機関は、2012年のアルバータ州議会総選挙でも予想を大きく外しているが、2015年州議会総選挙では予想を的中させた。だが2016年のイギリスEU離脱投票と、アメリカ大統領選では予想を外している。
 ブリティッシュコロンビア選挙管理委員会は5月13日、再集計を要請された5選挙区のうち、2つについては認め、3つについては却下したと発表した。
 再集計が認められたのは、バンクーバー=フォルスクリーク選挙区とコートニー=コモックス選挙区。再集計は、当選者と次点者の得票差が100票以内の場合と、得票数と集計結果に食い違いがある場合に認められる。ブリティッシュコロンビア選挙管理委員会は、今回要請された5選挙区の全てが、100票以内もしくは集計の食い違いという基準を満たしたわけではないと説明した。
 コートニー=コモックス選挙区では、新民主党のロンナ=レイ・レナード候補が10058票で当選と暫定的に発表されたが、わずか9票差で敗れた自由党のジム・ベニンガー候補による再集計要請が認められた。
 バンクーバー=フォルスクリーク選挙区では、自由党の現職サム・サリバン候補が9332票で当選と発表された。560票差の次点で敗れた新民主党のモーガン・オジャー候補は、再集計を要請したが却下された。ところが、6位となったBC市民ファースト党のフィリップ・ジェームズ・ライアン候補による再集計要請が認められた。不在者投票が、ある候補に403票入ったにもかかわらず、その封筒が399しかなかったというのが理由である。
 リッチモンド=クイーンズバラ選挙区では、自由党のジャス・ジョハル候補に263票差で敗れた新民主党のアマン・シン候補が再集計を要請したが、却下された。
 コキットラム=バークマウンテン選挙区では、自由党のジョーン・アイザックス候補に170票差で敗れた新民主党の現職ジョディ・ウィッケンズ候補が再集計を要請したが、却下された。
 メイプルリッジ=ミッション選挙区では、新民主党のボブ・ディース候補に120票差で敗れた自由党の現職マーク・ダルトン候補が再集計を要請したが、却下された。

 5月9日に発表された暫定集計結果は、自由党が過半数に1議席足りない43議席、新民主党が41議席となっているが、再集計の結果、両党が+1から−1議席まで変わる可能性がある。自由党は最大で44議席(過半数。このとき新民主党は40議席)、新民主党は最大で42議席(第1党。このとき自由党は42議席)となる可能性があり、3議席の緑の党が去就を鮮明にしていないことから、自由党が過半数に達しない場合、政権の行方はなおも不透明である。
 暫定集計結果は、17万6000票の不在者投票を加算していない。再集計は5月22日から24日の間に行われるが、候補者は最終的な集計が確定してから6日以内に、裁判所に再集計を求めることができる。
 ブリティッシュコロンビア選挙管理委員会は、不在者投票を含む票の再集計を行い、5月24日に選挙結果を確定させた。9日に暫定的に発表された当選者の変更はなく、議席は自由党43議席、新民主党41議席、緑の党3議席(定数87)で確定した。
 コートニー=コモックス選挙区は、新民主党のロンナ=レイ・レナード候補が9票差で当選と暫定的に発表されたが、再集計の結果、189票差で当選が確定した。
 それ以外の選挙区は、再集計する「得票差が100票以内」「得票差が500分の1以内」の規定を満たさなかった。不在者投票分を加算した結果、自由党候補が当選と発表されたリッチモンド=クイーンズバラ選挙区、コキットラム=バークマウンテン選挙区、バンクーバー=フォルスクリーク選挙区はいずれも自由党候補の当選、新民主党候補が当選と発表されたメイプルリッジ=ミッション選挙区は新民主党候補の当選が確定し、変更なしで終了した。最終的に、自由党の得票数は79万6672票で、79万5106票の新民主党を1566票上回ったにすぎず、ブリティッシュコロンビア州の歴史で最も接戦となった。

 再集計の結果を受けて、クリスティ・クラーク首相(自由党党首)は声明を発表した。
「43人のBC自由党候補は、議会の多数派として選ばれた。我々には前に進み、政権を築く責任がある。」
 だが新民主党のジョン・ホーガン党首は、選挙の結果は有権者が変化を望んだ証だと語った。
「クリスティ・クラークとBC自由党は及ばなかった。16年後の、今こそ新しい政権を築くときである。」
「我々は議会で過半数の支持を得る枠組みを構築できると、楽観している。」
 緑の党のアンドリュー・ウィーバー党首は、自由党と新民主党の両方と交渉していると認めた。
「ブリティッシュコロンビア州民に確実性を与えることが、重要である。」
「我々が正しいことを成し、我々が真摯にそれに取り組むよう、有権者が我々に重い責任を課したと受け止めている。」
 クラーク首相は引き続き政権を担う意欲を見せているが、鍵は緑の党が握っている。どの党が政権を握ることになっても、与野党が伯仲していることから、議員の移籍や、辞職・死亡あるいはそれを受けての補選の結果次第では、与野党が逆転することもありえるため、当分の間不安定な状況が続くことだろう。カナダの歴史上、少数政権は短命に終わることが多い。不安定な状況に耐えられなくなった与党が解散・総選挙に打って出たり、過半数を占める野党が内閣不信任したりして、早期に再選挙が行われる可能性が高い。
 新民主党のジョン・ホーガン党首と緑の党のアンドリュー・ウィーバー党首は、5月29日に共同記者会見を行い、クラーク政権を打倒し新政権を樹立する協定に合意したと発表した。これにより、新民主党政権が16年ぶりに成立することが、確実となった。新政権は連立政権ではないので、緑の党は入閣せず、新民主党の少数政権を4年間支える。
 ウィーバー党首は、新民主党と自由党の双方と交渉したと認めた。そして、自由党がキンダーモルガン・パイプラインに熱心だったことが、新民主党を選んだ理由だった。
 これを受けて、クリスティ・クラーク首相は30日、辞任せず、議会を召集し信任投票を行う意向を述べた。
「この州で権力の移動があるなら、それは密室で起こってはならない。」
 自由党は総選挙で第一党になったため、彼女は辞任を強制されない。いったい彼女は、何を目論んでいるのだろうか。
 一つ考えられることは、わずかな時間稼ぎをすることで、副総督が議会を停会してくれたり、野党議員が一人造反してくれたり、死亡したりしてくれることを期待するかもしれないが、非常に考えにくい。もう一つは、今辞任すればホーガン党首に組閣の大命が下るが、ひとたび議会を召集したうえで信任投票を行えば、総辞職だけでなく解散・総選挙の選択肢がある。総選挙になれば、自由党は資金力で優位に立てるだろう。だが、解散・総選挙は首相の要請により副総督が行うもので、日本とは異なり首相の自由にできるわけではない。総選挙直後の解散に、副総督は同意しないだろう。そして彼女自身も、解散・総選挙を要請しないと明言した。では彼女の真意は、どこにあるのか。
 ここにもう一つの考えがある。政治評論家のデビッド・モスクロップ博士は、こう説明する。
「彼女は、非常に気前のよい予算案とスローン・スピーチ(所信表明演説)を発表するだろう。そして新民主党と緑の党に、それを不信任させる。そうすることによって、野党になったときに有利なポジションを得るのだ。」


写真左:新政権構想を発表する新民主党のジョン・ホーガン党首(右)と、緑の党のアンドリュー・ウィーバー党首(左)。
写真右:総選挙当日に勝利宣言するクリスティ・クラーク首相。
 クリスティ・クラーク首相は6月8日、首相として宣誓した。彼女が総辞職しなかったため、彼女の政権はしばらくの間続行する。
 ブリティッシュコロンビア州議会は、6月22日に召集される。冒頭でまずスローン・スピーチ(所信表明演説)が朗読され、信任投票を行う。過半数を占める新民主党と緑の党は、すでにクラーク内閣を不信任する協定に合意しているため、スローン・スピーチは不信任される。これは内閣不信任と見なされるため、クラーク首相は総辞職か解散・総選挙のいずれかを選択することになる。副総督は解散・総選挙に同意しないだろうし、クラーク首相もそれを要請しないと明言している。よって慣例に従い、クラーク首相は辞表を提出し、最大野党・新民主党のジョン・ホーガン党首に組閣を命じるよう、副総督に要請するだろう。
 クラーク首相は、緑の党の協力を取り付けることに失敗した。緑の党は、新民主党を政権に就ける道を選んだ。クラーク首相は、なぜすぐに総辞職せず、スローン・スピーチまで首相の座にしがみつくのだろうか。
 彼女は、自由党党首の職を辞任していない。そのつもりがあるなら、とっくにそうしているだろう。よって新政権発足後、彼女は最大野党党首として「影の内閣総理大臣」を称する。自由党は依然として議会の最大勢力であり、過半数に1議席足りないだけである。議員は病気になったり、死亡したり、辞職したりする。補欠選挙は一般に、【政権交代をひき起こさないため】与党への批判票を集めやすく、野党が有利になる(ただしこの情勢では別である)。クラーク党首は、あと1議席を獲得し首相に返り咲くため、ありとあらゆる手段に訴えるだろう。
 ブリティッシュコロンビア自由党の元党首デビッド・アンダーソン氏は、クラーク首相の一見不可解な動きを、以下のように説明する。今回総選挙で自由党は、右派に訴える政策を主張して、バンクーバー郊外の中道票を失った。スローン・スピーチは自由党にとって、中道寄りへの軌道修正をアピールする機会となる。彼女はここに、新民主党右派が喜びそうな政策を盛り込んで、新民主党と緑の党に反対投票させる。これがあとで、議会での討論や次回総選挙に効いてくるのだ。
 トランスマウンテン・パイプラインの延伸は、アルバータ新民主党政権とブリティッシュコロンビア新民主党新政権の対立を、すでにひき起こしている。
 ブリティッシュコロンビア州議会で、野党提出のクラーク内閣不信任案が6月29日に可決された。クリスティ・クラーク首相は公約を翻し、解散・総選挙を要請したが、ジュディス・ギション副総督に拒否され、内閣総辞職した。副総督は同日、新民主党のジョン・ホーガン党首に組閣を命じた。

 6月22日に召集された州議会での最初の作業は、空席となっている議長の選出だった。議長は公平を期するため、離党して無所属になるのが通例だが、リンダ・リード前議長は自由党政権の高等教育大臣に就任したため、辞任していた。
 定数87の州議会で、与党自由党は43議席と過半数に一つ足りないが、野党は新民主党41議席・緑の党3議席で、野党連合は過半数に達しているため、数の力で議長の椅子を取るのはたやすい。だがその場合、与野党双方が43議席になってしまう。可否同数の場合は最後に議長が投票するが、カナダは日本と異なり、議長は継続審議になる方に投票しなければならない。内閣不信任案に対しては、信任する方に投票しなければならないので、野党連合は議長の椅子を取るとクラーク内閣を倒せなくなってしまう。結局、立候補者が自由党のスティーブ・トムソン議員一人だけだったため、彼が当選した。
 次の作業は、クラーク首相の施政方針を副総督が代読する「スローン・スピーチ」である。首相はその中に、手厚い社会保障、企業・組合による政治献金の廃止、炭素税増税、保育予算の増額と、野党の選挙公約をてんこ盛りに盛り込んだ。野党がスローン・スピーチを不信任した場合、彼らの政権が同じことをできないようにする嫌がらせである。クラーク首相は緑の党の離反を誘うため、公式政党の資格のない3議席の党にその資格を付与する法案を上程したが、野党連合の結束は固く、否決された。
 野党連合は、スローン・スピーチの信任投票に先立ち、内閣不信任案を提出した。これは、44対42で可決された。するとクラーク首相は、トムソン議長を辞職させた。わずか1週間の任期だった。新しい議長は、新民主党から選出されるだろう。そうすれば与野党の議席は同数となり、新与党に一人でも欠員が生じたら、政権打倒のピンチを迎えることになる。

 ホーガン次期首相はメディアに、最低時給15ドル、比例代表制を問う住民投票、キンダーモルガン・パイプライン延長反対などの方針を伝えた。
 ブリティッシュコロンビア自由党のクリスティ・クラーク党首(前首相)は7月28日、政界引退を唐突に発表した。彼女は8月4日に党首を辞任し、州議も辞職する。後継党首が選出されるまでの間、リッチ・コールマン州議が暫定党首を務める。
 クラーク氏は、6年半の任期をふり返りこう述べた。
「6年半の間、州首相としてBCの人々に仕えたことは、驚くべき名誉と特権だった。」
「私は、BCの全盛時代が前途にあると確信している。」

 クラーク氏はブリティッシュコロンビア初の女性首相となり、また2期連続再選されたカナダ初の女性首相となった。首相在任6年半は、ブリティッシュコロンビアで6番目に長い政権である。他の州が赤字を抱える中、クラーク時代のブリティッシュコロンビアは財政黒字を計上し、5年連続の均衡予算を成立させた。
 だが、2017年の州議会総選挙で過半数に1つ足りなかったことが、順調だった彼女の運命を狂わせた。彼女は野党がスローン・スピーチ(施政方針演説)を不信任できないよう、野党の公約をツギハギで取り入れるという恥ずべき行為に出た。だが野党はそれに乗らず、内閣不信任案を提出して可決させた。その結果、彼女は逆に野党第一党党首として、新民主党の政策を批判できなくなった。さらに、公約を翻し副総督に解散・総選挙を要請したことも、彼女の評判に傷をつけた。
 数々の偉業を成し遂げた彼女の最後は、姑息で見苦しいものだった。
 ブリティッシュコロンビア州議会は9月8日、自由党のダリル・プレカス州議を議長に選出した。議長は党幹部会を離脱するのが通例だが、彼は与野党伯仲状況下での議長就任を裏切りと見なされ、幹部会から除名された。これにより議会内勢力は、与党が新民主党41・緑の党3、野党が自由党41、無所属1、欠員1(定数87)となった。

 与党新民主党は、クリスティ・クラーク前首相が辞任する前の6月、プレカス州議に密かに接近し、議長ポストを提示した。だが彼は、自由党の同僚議員たちの顰蹙を買うような形での就任を拒否した。ところがクラーク首相は6月29日、不信任案が可決されると解散・総選挙に打って出ようとした。
 プレカス州議は、7月27日にペンティクトンで開催された会議で、クラーク党首が辞任しないなら離党すると強く迫った。彼女は翌日、唐突に政界引退を表明し、8月4日に州議も辞職した。リッチ・コールマン暫定党首は、プレカス州議と話し合い、議長に立候補しないことと、党幹部会に留まるよう説得し、同意を得たと考えていた。
 だがプレカス州議は、水面下で新民主党と交渉を続けた。両者の動きは、新民主党首脳しか知らず、自由党は全く気づいていなかった。9月8日に召集される州議会の第二セッションに合わせ、自由党は7日に会議を招集したが、彼は医師の診察を理由に欠席した。
 新民主党は当日になって、議員たちにプレカス州議を議長に推すことを発表した。そして立候補を望んでいたラジ・チョウハン州議、レナード・クロッグ州議、スペンサー・チャンドラ・ハーバート州議に、立候補しないよう要請した。そしてプレカス州議が議長に当選すると、与党側が喝采したのに対し、野党自由党は拍手を送らなかった。

 5月9日に実施された総選挙は、自由党43・新民主党41・緑の党3議席という結果となった。与党自由党は、クラーク首相が不信任されると自党の議長を辞職させ、次の議長は与党新民主党が出すのが筋だと主張した。 しかし、与党は議長のポストを取ると与野党が同数となり、何が起きるかわからない。議会の投票が同数のときは議長が投票するが、カナダは日本と異なり「デニソン議長の規範」により、議長は現状維持に投票しなければならない。自由党から議長を選出できたことは、クラーク前首相の辞職と合わせ、与党に3議席の優位を与えたことになり、2018年初頭の補選で敗れても当分の間安泰を保障する。
 自由党のコールマン暫定党首は、次のように述べた。
「彼は、私と同僚議員たちに不誠実を働くことによって議長になり、緑の党と新民主党に新たな1議席を効果的に与えた。」
 ブリティッシュコロンビア大学で政治学を教えるマックス・キャメロン教授は、カナダの少数政権は一般に18か月から2年で終わることが多いが、この与党連合は4年の任期いっぱいまで持つかもしれないと語った。


※デニソン議長の規範:イギリスの下院議長ジョン・エベリン・デニソン(1800〜1873、下院議長1857〜1872)が示した慣例で、イギリス連邦諸国に受け継がれている。その精神は、可否同数の場合は議長は現状維持に投票するというものである。内閣信任案や予算関連法案は、否決されると内閣総辞職か議会解散をひき起こすため、賛成投票する。内閣不信任案、審議打ち切り動議、修正案には反対投票する。初期の読会では法案に賛成投票して継続審議とし、法案の最終的成立段階では反対投票する。

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