ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

青春小説 ■春海■コミュの第2章■入梅・引き合う時■3

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
○男達のいる風景 2  (2)

雨が降ってた・・
ラジオが「前線の活発な〜今日から入梅しました・・」しゃべってる。

雨か・・俺は結構、雨は好きなんだ。
このオンボロアパートはトイレも付いてないけど
4階建ての3階だからとても眺めが良い。
このあたり一体ボロアパート街なので
ほとんど2階建てが多いためだ。
なんでも昔、どこかの会社の女子寮だったらしい
それで、4階建てのビルなんだけど、
トイレも付いていない貧乏ビルなので俺にも借りる事が出来たんだ。

屋根がいつもより静かな色をしていて。
時折、轍を残して車が通り過ぎて行く。
「あの、車のタイヤが水溜りを引き裂く音が好きなんだな。」・・と、ひとり言。
窓のベランダに顎を乗っけてボウッと外を眺めていた。

春海・・どうしたかな?・・あれから全く音沙汰が無い。
あの時電話番号教えたけど番号間違えて書いたかな?
バイト先の電話番号を書いたかな?・・嫌、違う。
そしたら、バイト先から電話かかってくるよな・・
あれから3ヶ月近くが経過していた。
気にはなってたけど・・
こちらからは連絡の取りようが無かった。

と突然「ドンドンドン!」ドアが鳴った!
もしかしたらと体が硬くなった。

開けようとした瞬間
男が勝手に扉を開けて入って来た。

「久し振り・・だ・・な・・?」
「ヨッ!・・久し振り・・」 
・・「おう!わざわざ悪ぃなナベ!元気だったか?」
「おう、まあな。おめえは元気だったかよ」
相変わらず口が悪い。

「渡辺宏幸」通称ナベ。
学生時代からの親友だ。
こいつとは、学生時代から一緒にバンドを組んでいてドラムを叩いてた。
今は、子供用劇団のアニマルズとかっていう
ぬいぐるみバンドで幼稚園や遊園地に営業をやっている。
かぶってるのは太ってるからブタだと思ってたら
クマだった・・面白くねぇ・・。

前は、俺のアパートのすぐ近くに住んでいたので
何かと生活を共にする事も多かった。
風呂に行くのも、飯を食うのもいつも一緒だった。
女に振られて焼け酒を飲む事も少なくなかった。
無論ほとんどがナベの焼け酒だ。

惚れっぽい性格で、身近な女には片っ端から惚れて行った。
惚れると前後の見境も無く「結婚しようぜ!」を連発する。
そして振られる。そんな事の繰り返しだった。
酒を飲みながらナベが愚痴る
「おめえよう、おめえは汚ねえよ」・・
「何がだよ」
「おめえは、一度でも女に結婚してくれって頼んだ事あるかよぅ・・」 
「んなもん・・ある訳ねえだろ。」・・
「だろっ?・・俺はさ、惚れてる女に片っ端から告白しちゃってさ。
でも、結局みんな逃げてっちゃってさ」
「ナベのやり方に問題があるんじゃねえの?」
「うるせい!おめえはそんな事もいわないのに女がくっついて来るし
・・やっぱ、おめえは、汚ねえよ」
「じゃあ。お前も言わなきゃいいんジャン?」
「このナベ様がそんな中途半端な事できっかよ!」

少し論点がずれているようにも思えるんだけど
あれはあれで、ナベ式に女に対しての精一杯の誠意なのだから。
俺はその考え方は好きだった。
ただし、俺には出来ないけどね。

「で・・今日はナンなんだ?」
ナベが上目遣いで睨みながらたずねて来た。
・・と同時に・・ドン!日本酒をテーブルの上に置いた。
「俺はこれだ・・」
「またフラれたのか?・・」俺がため息混じりにつぶやく。
「何がまた・・だよ!今日は飲むぜ!」・・

「ちょっと厄介事が起きちまってさあ」
「厄介事?おめーにそんなもんあんのかよ」
「まあ、詳しい事はグチが来てからにするよ。
「へへへ。グチも呼んだのか?面白そうだな」
その時だった。
・・コンコン・・ドアが鳴った・・
「あいあい・・」ナベが玄関に出ようとしたのを
突き倒すように、横をすり抜け俺が出た・・
「ブギィ」ナベが俺に突き倒されて
つぶれたブタのように床に張りついた。

「ヨッ・・」もうひとり男が入って来た。
今、来たのは「江口忠義」通称グチ・・
こいつも愚痴るんだなあ・・
よそでは結構き然とした男なんだが。
俺の前に来るとほとばしる様に愚痴る・・
「グチか?」ナベが叫ぶ。
「ああ、グチだ」
「おお!来たなグチ!聞いてくれよ!」いきなり始まった。

このグチも昔同じバンドのメンバーだった。
その名も「追い越し禁止(NO PASSING)」イケると思ったんだがなあ

いきなり、グチがボソッと話し始めた。
「なあ、キテキ。お前ちょっと前に、この部屋に女を連れ込んでなかったか?」
「あん?・・ああ・・ちょっと色々あってな・・」 
突然立ち上がったナベが
「なにぃ!!お前また・・罪も無い女の娘を!!!
このナベチャンが成敗してくれるぅ!」
「アリャリャ!一升瓶が半分くらいなくなってる・・
クイックイックイッ。こいつもう酔ってるぜ。」
グチが笑う
「グチのその笑いはやめてくれ!ナベ!ちょっ!ちょっと待て!
俺がいつ、罪も無い女の娘に何かしたんだ!?」
「この間のユミちゃんはどうした!?その前のミクは!クショー・・ ・・」
「泣き始めちゃったよ。なあ、ナベ。
俺は彼女達に何もやっちゃあいないぜ、手も握ってねえ。」
「ンとか?」 
「ほんとさ・・」 
「部屋に連れこんでおきながら何も出来ないとは、
おめえもモテ無い奴だなあ・・がっはっはっは」 
「ほっとけ!ナベに言われたくないぜ、くそっ!」

「しかし、いつ来てもこの部屋は汚いなあ・・」
いつものように片付け始めるグチ
「止めろ!いじるなって」
「こんな部屋じゃあ話も出来ないだろう?」
「へっへっへっへ・・グチは相変わらずまめな奴だなあ
・・キテキの良いお嫁さんになるぜ」
♪リリーリリーン♪リリーリリーン
「おっ電話だ!グチの横にあるぜ出ろよ」
「ん?ああ・・」 
「止めろ!出るな!俺が出る!」
いきなり俺の両腕を羽交い締めにするナベ
「出ろ!グチ!何かあるぞ!」 
「止めろっちゅうんだよ!」
ガチャ

「はいはい。。。。。。えっ?青柳軒?ラーメン2丁?・・」

「ぶわっははは!まちがいでんわだよ〜〜ん。
いつまで捕まえてんだ放せ!ナベ!」
振り払うとまた豚のようにつぶれるナベ
「ブギュッ!!」 

「間違いですよ」ガチャ 
「青柳軒かあ・・」ひとり言のように俺がつぶやく
「青柳軒が何だよ」
「ああ、踏み切り近くのすっごくちいさなラーメン屋なんだ。
親子三人でやっててさ、奥さん綺麗でさ・・ラーメン食ってたら
隣で坊やが車で遊んでんだよ『プップー』ってな・・」
「それがなんだって言うんだよ。」 
「まあ聞けナベよ。お前分かるか?
親子三人で小さな店をやりながら細々と暮らしてるんだよ・・
ラーメンは美味かったが・・なんだか妙にしょっぱい気がしてな・・」
「わからねえ」
「おまあなあ!良い話してんのに鼻くそホジってんじゃねえ!ボカッ!」…
「あ゛でっ!・・」

「まあいいや・・俺の話を聞いてくれ・・」さえぎるようにグチが言う
「なあ、キテキ、俺その日ここの玄関まで来たんだ。
そしたら『ネオンサイン』が流れてた・・
だから、俺はそのまま退散したんだ・・
どういう事なのか説明してくれないかな?」
「すまなかったなグチ・・実はな・・△%$▼♂#△♀・・てなことでさ」
俺は一部始終を話した。
無論、キスの事は伏せておいた。ナベには刺激がありすぎる

「ふええ!そんな事ってあるのか!」ナベが大袈裟に納得する。
「何かおかしくないか?そんな事、普通は考えられないな。
何か裏があると見た方がいいんじゃないか?」とグチ。
「あん?そうかな・・」と俺。
「へっへっへ・・そうだぜ!何かあるな!新手の美人局(つつもたせ)とか、
何かの勧誘とか、麻薬の売人とかよ!」
とたんに元気になったナベが叫ぶ。
「へっ・・そうかなあ?・・」 
「そうだぜ、きっとよぅ・・まあいいや・・人生ゲームやっか」
その昔、クリスマスの日。女の子と待ち合わせをしていたのに
グチとナベに押しかけられ朝まで人生ゲームに付き合わされた。
おかげで彼女とのデートには行けなかった。
勿論、謝ったがその後のお付き合いは無い。

「またかよ!俺は話があるからお前らを呼んだんだぜ」 
「カカカ!話なんて今日でなくてもいいじゃん又、明日さ!」
「それもそうだ!もうどうでも良くなっちゃったぜ」 
「グチもか?」 
「うん、いいよ。やるか・・ゲーム」
その日の夜は朝まで大の大人が集まって、またもや朝まで
人生ゲームをやる羽目になっちまった・・まだ・・雨は止まない・・
って・・おいおい!題名■引き合う時■だろ!これじゃあ話が違うぜップ!
モガ!・・モガグガゲゴ……と・とにかく雨は止まない・・放せ!ナベ!
モガ!ガアグゲゴオオン?……・

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

青春小説 ■春海■ 更新情報

青春小説 ■春海■のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング