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兵庫県立夢野台高等学校コミュの霧山シリーズ第五話

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コミュ内全体

雪 幽玄

瀬戸内育ちには、雪は幽玄の世界である。瀬戸内にもときには雪
降る日もあるが、たいていはちらちらっと舞う淡い牡丹雪である。
雪合戦に興じ、転げ回って遊んだ幼い日の思い出は遠い日の夢の
なか、こころにしみる雪景色は旅の中にある。

 飛騨高山の茅葺屋根に積もる豪雪は一幅の絵であった。一切の
彩りを拒む限りない白い世界は非日常性の夢舞台であった。六甲
の山荘から樹氷を撮り続けた日の凍える未明の大気は、雪で洗わ
れて透き通っていた。凡俗の雑音、饒舌を吸い込んだ雪道を独り
歩むと雪幽玄の境地に入る思いであった。熊を食らう会に参じる
ために雪を踏みしめ、かき分けて辿り着いた氷ノ山のヒュッテは
メルヘンの世界であったが、雪国暮らしの難渋も味わった。残雪
の白樺林をぬう志賀高原は水墨画の空間であった。雪の重さに耐
えて咲く梅の花は美意識を充たしてくれた。有馬へ抜ける雪の地
獄谷では、雪の重さをはねかえす竹の音が、一瞬、山の静寂を破
った。栂池や乗鞍、神鍋や鉢伏のゲレンデに立つスキースタイル
の写真はあるが、シュプールを颯爽と滑降する雄姿は一葉もない。
初歩から一歩もでないまま、わがスキー人生は終わっている。雪
はながめるものであったのだ。眺めた雪景色の圧巻はユングフロ
ウヨッホからのアルプス連峰360度の銀世界であった。

 「雪の降る町」の歌声が流れてくると、決まって、亡き妹を偲
ぶ。妹は初夏に逝ったのになぜか、雪の季節と重なるのだ。妹と
雪を結ぶ思い出は何一つないのだが、白百合に包まれた、麗しく、
清楚な十九歳のいのちが清浄な雪を連想させるのであろう。息を
引き取る前夜喘ぐ妹の背中をさすりつづけた。雪のような白い肌
であった。寂滅を察知して叫んだ翌日、落日とともに母に抱かれ
て息を引き取った。世俗の汚れを知らぬまま逝き急いだと父は哭
いた。高校を卒業した翌年のことである。九つ違いの美しく、聡
明な妹は愚兄の自慢であった。

 二つ下の弟は十七歳で他界した。敗戦の年の早春、寒波のなか、
深夜の空爆のために凍える防空壕に閉じ込められて、風邪をこじ
らせたのだ。高熱に耐えられなかったのである。アメリカ軍のB
29が弟も奪ったのである。弟の葬送の日は、戦時体制のなか、動
員先の吹雪の中で手を合わせて祈った。哀しみを許さない時代で
あった。間もなく召集令状がきて、大日本帝国陸軍の新兵として
徴兵された。死線をくぐる事となる原子爆弾の閃光をあび、放射
線にさらされた。弟との死別の哀しみは戦争の終るまで許されな
い、激しく辛い日々を送るのであった。今日、亡き弟の命日、雪
のちらつく朝である。

当津  隆

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