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MmRコミュのMmR-43. Olli

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コミュ内全体

「私は、プロレスラーですから」
 胸を張ってそう答えるるうに、思わず唇から少しの笑みがこぼれた。
 普段は少し鈍くさかったり、頼りない部分がある彼女の、今までに見たことのないその凛とした姿に、思わず命がけの戦いをしていることすら忘れそうになる。
 ――こんな場じゃなく、もっと違う立場で出会って、立ち会ってみたかったな。
 そんな想いに、ちくりとした痛みが胸に刺さった。万全の体調で、持てる力と技を互いにすべてぶつけ合うような、そんな闘いをしてみたかった。
 鍛え、続け、繰り返し鍛え、絶え間ない鍛錬の結晶として自らに刻み込まれた闘いの魂。それを持つ者なら誰しも憧れるであろう、その力を、技をすべて発揮し魂を燃やし尽くすような闘い。
 るうはそれができる相手だった。
 自分と違う方法で、自分に劣らないだけの熱い魂をその身に刻み込み鍛え上げた女性。自らの全てを賭け、ぶつかり合いたいと思わせる存在。
 返すがえすも、この不幸な巡り合わせが残念で仕方なかった。
 が、焦がれるような闘いの衝動に今は背を向け、ただ自分が生き残ることを考えなければならない。
 どんな手を使っても。
「――いいわ」
 うっすらと笑みを浮かべ、おりは低く腰を落とした。外れた左肩を向けて半身に構え、残った右腕を軽く引き、身構える。
 間合いは5メートルほど。二人にとっては一秒とかからない距離だ。
「それじゃあ、私も全力で相手するね。かかって来なさい?」
 不敵な笑みと真っ向からの視線に、るうの表情にも険しさが宿った。おりと同じように腰を沈め、折り曲げた膝に突進のバネを溜める。
「それじゃ、……いきますよっ!」
 声とともに、弾丸のような勢いでるうの体が走った。5メートルの間合いを一息に詰め、肉弾の圧力がおりに殺到する。
 しかし、そのコンマ数秒の間に、おりの目はるうの足の運びを捕らえていた。
大幅なストライド。上半身の揺れ。踏み出す一歩。次の一歩に向け床を蹴る逆足。
 打撃ではない。組み付きからのテイクダウンか、もしくは投げ技。
 頭で考える前に、体が動いていた。突進するるうの動きに合わせ、電撃の速さで一歩距離を詰める。絶妙のタイミングで間合いを殺され、たたらを踏んだるうの懐に飛び込み、
 懐から抜き放った拳銃を脇腹に押しつけ、おりは引き金を引いた。

 くぐもった撃発音とともに、血しぶきが赤い霧のようにパッと空間に散った。
 素早く横に飛び、身をかわしたおりの脇をすり抜け、るうがよろめきながら行き過ぎた。銃創の開いた真っ赤な背中に手にしたワルサーを向け、再び引き金をしぼる。
 着弾の衝撃に、るうの体がびくんとはねた。くずれそうな膝で必死に体を支え、緩慢な動作でおりに向き直る。
 さらに二発。放たれた銃弾がるうの体を貫く。血の霧が銃創から飛び散り、その身を破壊していく小さな鉛弾に彼女の体が揺らぐ。
 どす黒い血反吐が、彼女の口からあふれ出た。血まみれになった体を引きずるようにして、それでもるうは諦めず、視線を前に一歩ずつ、おりに向けて間を詰める。
 拳銃の扱いはあまり得意ではないが、この距離なら外しようがなかった。
 落ち着いて狙いを定め、おりは自分を睨みつけるるうの眉間に鉛弾を叩き込んだ。

 倒れ伏したるうが完全に動かなくなるのを確認し、おりはほうっ――と息をついて銃口を下げた。
 ワルサーP38。ひよたまの持っていた銃。
 彼女を襲ったのは、この銃を奪うためだった。もちろん、自分の格闘術には絶対の自信を持っていたが、たった一発の銃弾でもそれをしのぐだけの力があることを、おりは知っていた。
 だから、この銃の存在は最後の切り札に取っておくはずだった。
 他のコテハンが皆死んでしまうまで逃げ回り、あるいは素手で倒し、最後の二人になったところで、自分が素手だと思い込んでいる相手を射殺する。そのはずだった……のだが。
 なかなか思う通りには行かないものだ。おりは誰に聞かせるでもなく溜息をついた。
 それもこれも、るうの想像以上の強さのせいだった。手負いの相手ではあったが、素手での戦いでは結局彼女には勝てなかったかも知れない。最後の銃撃だって不意打ちのようなものだ。自分が銃を持っていると知られていれば、また違う結果になっていたとしてもおかしくはなかった。
 ――やはり、彼女とはこんな場ではなく、もっと心ゆくまでぶつかり合い、技を競い合ってみたかった。自分が下した死であるのに、たとえようもない喪失感に心の奥が疼く。
 ひざまずき、るうの体を仰向けに寝かせた。そしてひよたまと同じように、手を伸べて見開かれた目を閉ざしてやる。
 自分の殺した相手がまだ目を開き、自分を殺した相手と同じ世界を共有していることがいたたまれなかった。偽善だよねと自嘲しつつも、その辛さから目を背けるために、おりはるうに向けてせめてもの冥福を祈る。
 彼女が最後に見た世界。友人に裏切られる非情な現実。
 宗教は信じないけど、彼女には天国に行って欲しいと思った。こんな地獄に居続けるのは、私だけで充分だ。
 ゆるりと首を振り、おりは追憶を断ち切った。もうこの場にはいられない。荷物をまとめて早々に立ち去ろう。すろぷろの語る脱出のプランは確かに魅力的だったが、あはは。もシアンも死んでしまった今、彼と行動を共にするメリットは薄い。
 気配を感じたのはその時だった。
「おりさん……これは……」
 血と硝煙の匂いで、濃密なその死臭で、感覚が鈍っていたようだ。固い声に顔を上げた時には、表情をこわばらせたすろぷろが部屋の入り口に立っていた。
 考える間もなく右手がワルサーを引き抜き、立ち尽くすすろぷろに向けて銃撃が火を吹いた。

         【残り8人】

コメント(2)

ぇーん(つ▽・)るうさん死んじゃった
おりさんひでぇ……?(´Д`;)
るうさん乙……(ー人ー、)
すろぷろ逃げろーー!
せめて樹っつぁん逃がせーーー!!

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