法学院　行政書士試験制覇の扉コミュの行政書士試験対策　民法①

民法を苦手とする人は多いかもしれませんが、馬鹿真面目に『習う姿勢』ではなく『慣れる姿勢』を
作ることが大切です。

イメージが比較的簡単な法律ですから、焦らず慎重にいきましょう。

『制限行為能力者』

未成年者は、次に挙げる条件以外では単独で法律行為をする事ができません。

・単に権利を得、義務を免れる行為
例：贈与を受ける、債務を免除してもらうなど。

・法定代理人から処分を許された財産の処分
例：お小遣いの範囲内での売買など

・法定代理人から許可された営業に関する行為
例：未成年者による営業行為など

因みに上記の３つの条件によってされる契約などについては取消しの対象になりません。お小遣いの範囲内であれば未成年者の責任で十分取引などができますし、営業行為などについても、法定代理人の許可があれば、取引の相手方が下手に不安定な立場に立たされる心配もないだろうと考えられます。

成年被後見人は、一身専属権的行為（婚姻契約など）や日常生活に関する行為（日用品の購入など）以外での行為については単独で有効に行うことができません。

また、成年被後見人の場合は例え事前に法定代理人の許可を得た上で行為に及んだとしても取り消しの対象になることには注意が必要です。
これはなぜかというと、成年被後見人というのは精神上の障害により、事理認識能力が欠いている状況にあることなどから、例え許可を与えても必ずしも、許可の範囲内に沿って行為に及ぶとは限らないと考えられるからです。
許可後の行為を有効にしてしまうと、契約をした本人自身が大きな損害を被る恐れもあることから、これを保護するために許可を受けたあとの行為でも、原則取消し可能であるとされているのです。

これに対して、被保佐人や被補助人というのは原則単独で法律行為をすることが可能となります。

被保佐人については、債務を承認することや不動産の処分などの重要財産に関する行為、訴訟行為や元本の領収をすることなど一定の条件に当てはまる行為については、法定代理人の許可がなくてはならないので、被保佐人が許可を受けなくてはできない一定の行為について確実に押さえて置くようにしましょう。

被補助人にも一定の範囲において、法定代理人の許可を受けなければできない行為があるのですが、裁判所にて行われる審判によって決定されるので、必ずしも許可対象行為が常に同じであるとは限りません。

成年後見・保佐・補助開始について請求をできるものは四親等内の親族及び本人や配偶者、検察官などです。

請求先は家庭裁判所となります。

尚、補助開始の審判について本人以外の者が請求をする際は、本人の同意が必要であることには注意が必要です。

～詐称行為について～

制限行為能力者が単独で締結した契約などは、原則取り消せますが、制限行為能力者自身が身分を偽って契約した場合などについては取消しが出来ません。
身分を偽っておきながら、都合が悪くなったら身分をネタに即契約解除なんてこともありうるからです。

～追認について～

制限行為能力者が相手方と取引などをした場合、相手方は法定代理人、制限行為能力者などに対し、相当の期間を定めて追認をするかどうかの催告をすることができます。

法定代理人に対する催告に応答がない場合は、追認したものとみなされます。

これは能力回復後の制限行為能力者自身に催告した場合も、同じ結果となります。

ただし、能力が回復していない制限行為能力者（被保佐人・被補助人など）に対する催告については、応答がなければ取り消したものとみなされます。

これらの違いは注意しましょう。

～制限行為能力の第三者への対抗力～

制限行為能力を理由とする契約の解除は、善意の第三者にも対抗が出来ます。強迫などによる契約の取消しに置ける第三者への対抗要件と同一と考えていいでしょう。

『代理制度』

民法上、有効に代理契約をするには次の条件を全て満たさなければなりません。

・代理権があること

・契約の際、顕名（○○の代理人であると表示する行為）をすること
※顕名を欠いた場合でも、相手方が代理人であることを知っていた場合や知ることができた場合などについては有効となる

・代理権の範囲内で契約をすること

～契約に瑕疵がある場合～

代理人が契約をする際に、詐欺や脅迫、錯誤などで契約をした場合、代理人を基準として考えます。

ただし、取消しについては本人が取り消すがことができます。

～無権代理・表見代理～

代理権がないのに代理行為をしたり、代理権があってもその範囲を超えてした代理行為は無権代理となり、原則本人には効果が及びません。

しかし、取引の相手方が善意無過失で契約に応じた場合は例外として、本人に効果が帰属します、これが表見代理です。

表見代理が成立するには、本人に帰責事由がなければなりません。
例：過去に代理権を与えたことがあった場合、代理権授与の表示はしていたが実際には代理権を与えていない場合など。

このように本人にも関与があることが必要になります。

～無権代理の追認・責任追及～

無権代理人と契約をした相手方は、本人に追認をするかどうかを催告できます。この場合相手方が善意であるか悪意であるかは関係ありません。

追認がなされた場合、契約時に遡って効果が適用されることに注意しましょう。

催告の際、契約の相手方が善意である場合は、本人が追認する前までの間であれば取消しを主張することができます。

善意無過失の場合、取消しは勿論無権代理人自身に履行の請求や損害賠償請求をすることも出来ます。

ただし、無権代理人が制限行為能力者である場合は責任追及不可能であることは押さえましょう。

尚、代理人には制限行為能力者でもなれる点も注意です。

～無権代理に関する相続～

無権代理人が契約を締結した場合において、無権代理人が本人を単独相続した時は、その無権代理は有効なものとなります。

ただし、共同相続した場合については共同相続した者全員が追認をしなければ、有効にはなりません。

逆に本人が無権代理人を相続した場合、追認するか拒絶するかは任意です。

～復代理制度～

代理人が復代理人を選任できる要件は代理人の立場によって異なっています。

法定代理人：いつでも選任可能、復代理行為の全てに責任を負う。
ただし、やむを得ない事情などによる選任は選任・監督に対して責任を負う。

任意代理人：本人の許可、又はやむを得ない事情がなければ選任ができない。
原則復代理人の選任・監督についてのみ責任を負うが、本人の指図によって復代理人として選任されるが者が不適格であることを知りながら、本人に報告しない、若しくは解任を怠るなどをした時はそのことについて責任を負う。

～自己契約・双方代理～

これらは原則禁止となっていますが、本人が許容している範囲での債務の履行などは有効に行えます。

また、本人の利益を害する恐れのない行為についても禁止されません。

特に意思表示は主に第３者を交えた法律関係が殆どです。

それぞれの原則と例外をセットで覚えてしまえば、逆に言うと得点源となりますのでしっかりと学習しておくべき項目だと思います。

　『意思表示』

民法で規定している意思表示として、通謀虚偽表示・心裡留保・錯誤・詐欺・強迫があります。

～通謀虚偽表示～

これは2人以上の者が通謀して、何らかの法律関係があるかのように見せかける、又は事実の法律関係とは別に偽の法律関係を装うことを指します。

例えば、Ａが強制執行を免れる為に自分の所有物である不動産をＢに仮装譲渡したような場合です。

通謀虚偽表示は、無効な意思表示です。例外も特にありません。

そしてこの無効は善意の第三者には対抗することができません。
（善意の第三者は無過失である必要はない）

例えばＡがＢと通謀して、Ａ所有の建物をＢに仮装譲渡し、それに乗じてＢが善意のＣにその建物を売却した場合、ＡはＣに無効であることを理由に建物の返還を求めることはできないことになります。

では、このあとＣが悪意のＤに更に譲渡した場合はどうなるか、これも同じくＡは返還を求めることができません。

この場合、何れにせよＡに返還請求を認めると、善意のＣの権利が不当に害されることになるわけですから、最終的に
取得した者が悪意であろうと善意であろうと、取得までの取引の過程に善意の者がいる場合は、最終的に建物の所有権を取得した者は保護されるのだということです。

～心裡留保～

別名単独虚偽表示などとも言われ、簡単に言うと嘘や冗談のことを指します。

心裡留保は、原則有効な扱いとなります。
ただし、相手方が表意者の真意を知っていた、若しくは知ることができたような場合は無効な扱いとなります。

心裡留保は、通謀虚偽表示と同様に善意の第三者には対抗することができません。
（善意の第三者は無過失である必要はない）

なので、第三者との関係においては通謀虚偽表示と同様であるとお考えください。

～錯誤～

これは勘違いなどを指します。

1000円で買う積りを2000円と意思表示してしまったような場合がそうです。

錯誤は原則無効となりますが、法律行為の要素に表意者の重大な過失がある場合は無効を主張することができません。

※要素の錯誤とは

法律行為の要素となる部分において思い違いなどをしている場合がこれにあたります。
先ほどあげた金銭に関する意思表示など、法律行為としての意思表示に錯誤がある場合などは要素の錯誤となり、錯誤について重過失がなければ無効の主張ができることになります。

余談として、動機の錯誤というものもあります。
これは、何故購入しようと思ったかなど、法的意思表示を形成する前の段階での錯誤ということになります。
例えば、土地値があがると信じ込んで当該土地を買った場合などがそうです。

この場合においては、無効の主張ができません。少なくとも法的な意思表示をする段階では購入するという意思においても、購入金額などにおいても錯誤はないと考えられるからです。

錯誤の無効は善意の第三者にも対抗することができます。

～詐欺～

当然知っておられると思いますが、騙されて財物の交付を行ったような場合です。

詐欺については、取消しをすることができます。

対抗力として、善意の第三者には対抗することはできません。
（善意の第三者は無過失である必要はない）

～強迫～

脅されて不動産を売却したような場合がこれに当たります。

強迫については、詐欺と同じく取消しができます。

対抗力としては、善意の第三者に対抗ができます。

詐欺と強迫の違いはしっかりと区別しましょう。

～まとめ～

・効果が無効であるもの（例外的に無効も含む）

通謀虚偽表示

　心裡留保

　　錯誤

・無効を善意者に対抗できるもの

　錯誤

・取消しができるもの

　詐欺

　強迫

・取消しを善意者に対抗できるもの

　強迫

～追認について～

追認とは、取消しができる関係について有効にする行為を指します。

尚、契約などにおける取消し権は、追認可能な時期から5年間、又は行為の時から20年間で消滅します。
追認可能な時期とは、詐欺でいえば詐欺の事実を知ったとき、強迫では強迫から免れた時などです。

取消した場合、その効果は行為時に遡って適用されます。

・法定追認

法定追認とは、一定の行為をすることで追認したと法律上当然にみなされるものをいいます。

例えば、代金の全部または一部の支払いや履行の請求などがこれにあたります。

　『時効』

時効とは、真実の法律関係とは別に現実の事実状態が一定期間続いた場合、その事実関係を尊重し、法的に権利を取得、又は消滅させる制度をいいます。

～土地の占有において、取得時効が可能である要件～

・所有の意思があること

・平穏且つ公然に占有していること

・善意者が他人を土地を占有している場合、10年間の占有で時効取得ができる。

・悪意者が他人の土地を占有している場合、20年間の占有で時効取得ができる。

よって、賃貸借においては賃借人が賃貸物を時効取得するということは原則としてありません。

～前主の占有期間を主張する場合は～

ここで注意するところは、承継による継続占有や賃貸などによる代理占有などです。

例えば善意で他人の土地を8年間占有していたＡから
新たに占有を引き継いだ悪意のＢがその後2年間占有すれば時効取得できるかどうかですが、これには2種類のケースがあります。

１つは、自分の占有期間のみを主張する場合においては残り18年間の占有が必要となります。

もう１つは、前主（善意者）の占有期間も併せて主張すれば、上記の事例では時効取得できます。

前主の占有期間を主張する時は、前主の瑕疵も引き継ぐところに注意が必要です。
つまり、前主が悪意であれば通算で20年間の占有がいるということ、善意の場合は10年間の占有が必要であるということになります。

尚、賃貸などをして、本来の占有者が占有から離れたような場合でも賃借人がその土地を占有していれば代理占有となり、賃貸している期間も占有している期間として計算されます。

～消滅時効～

通常の債権は10年で消滅しますが、所有権以外の財産権などにおいては20年で消滅時効にかかります。
例えば地上権、地役権などがそうです。

他にも宿泊代や医療費、運送料などの債権については短期消滅時効という特別な区分けがなされていて、1年や2年などの短い期間で時効による消滅するものがあります。

～時効の中断～

時効は一度進行が開始すれば止まることを知らないわけではありません。
一定の行為をした場合には、時効は中断します。

時効は中断すると、それまでの経過期間は無となり、進行が再開する時はまた振り出しからの進行となります。

「時効中断となる行為」

・債務の承認

・裁判上での請求

・差し押え、仮処分など

・催告

債務の承認はわかるでしょう、「必ず支払います」などというように債務の存在を認める行為です。

裁判上での請求は、訴えの却下や取下げがあった場合は時効の中断はありません。

催告とは、簡単に言うと個人的に請求することです。
これは、一応時効中断こそしますが、時効の進行が振り出しになるのではなく、6ヶ月間の間進行を止めることしかできないのです、催告は1回のみ有効です。

催告については、6ヶ月間の不進行期間の間に裁判手続きなどを経て時効の中断を図ることになります。
この場合、裁判上での請求により時効が中断すれば催告時から中断したものとみなされます。

～時効の援用と利益の放棄～

時効は単純に期間を消化すれば効果があるわけではありません、「時効になったので払いません」などというように、時効の効果を意思表示する必要があります、これを『時効の援用』といいます。

時効の利益とは、時効によって得られる利益（債務の消滅や権利の取得）などを指しますが、これは時効完成後であれば放棄することもできるのです、時効完成前は放棄はできません。

これを認めてしまうと、契約時に特約として「時効の利益は予め放棄するものとする」などというように、時効の援用を事実上不可能にしてしまうことも可能になり、債務者が不利な立場となりますから、時効完成前は時効の利益を放棄できないということも併せて覚えましょう。

時効の援用がなされると、時効開始時に遡って権利を取得、又は義務が消滅します。

因みに、債務の承認などをしてしまった場合は、その後時効の援用はできません。（判例）
禁反言の法理などともいいますが、簡単にいってしまえば言ってる事とやってる事が食い違ってはいけない、ということですね。

～援用は誰がするのか～

援用は時効によって利益を得られる者であれば行うことができます。

例えば、保証人や抵当不動産の第３取得者です。
こういった立場の人からみれば、債務はなくなってくれた方が良いわけですから援用も当然できます。

～時効の原始的取得～

時効によって不動産などを取得した場合、その不動産に抵当権などの物権がくっ付いていても、それらの制限を受けることなく所有権の取得ができます。

民法は難解な部分もありますが、一度身に付けばサクサク進む法律なので、めげずに頑張ってください。行政法も大切ですが、それと同じく民法も大切なのです。