ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

切磋短歌コミュの清水房雄歌集「已哉微吟」

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
 つい先だって、葛原妙子賞の受賞が決まった酒井佑子氏とお話しする機会があった。初対面であったが、私が清水先生のお名前を出すと驚かれて、
「私も清水先生に教えていただいてのよ。」
 そう仰った。偶然に清水先生の弟子二人が出会って話が弾んだことであった。
 清水先生のお弟子が様々な場所で活躍されていることに、先生の短歌に対する考え方が端的に示されている。

 さて清水房雄第13歌集「已哉微吟」であるが、その特徴は、明らかに作者の”思い”を詠った歌にある。思いの対象は、常人には想像も及ばぬ老いの世界であり、戦中戦後の日本という国、日本人という人間の実相であり、軽口短歌・妙巧短歌の氾濫横溢の現在である。

 写実写生というが、回想をベースにした歌にしても、リアルタイムの歌にしても、集中のこれらの歌は心理詠とも呼ぶべき歌である。心理という観念をどのように言葉に定着させるかという心的過程は、草木を写実写生する過程とは、同じようで実は異なっている。

勿論、「一去集」以来の作者の気の遠くなるような修練は、草木風月に対しても人間に対しても、アララギ伝統の「生活即短歌」に基づく写実写生の実践であるから、歌集「已哉微吟」の中には散りばめられるように生活嘱目の風景が詠われ配置されている。

処女歌集以来の作者の写実写生の実践は、これらの生活嘱目の歌を単純化する。集中の509首のうち、主観語の使用は極めて少ない。草木風月そのものの属性が美しい哀しい等という素直な歌は無い。すべて作者の心理のフィルターを通して、自然物と言えども作者の心理が投影されている。

そして対象が一旦生活嘱目を離れ、作者の最も重要なモチーフである老い、戦争を詠うとき、単純化という技法は歌そのもののバックボーンとなっている。

写実写生から始めた作者の中で、単純化という手法は磨かれて、遂にそれは、写実写生を凌駕する。いや凌駕という言い方が十全でなければ、包摂すると言い換えてもよい。単純化は写実写生を包摂する技法となったのだ。

<続く>

コメント(2)

こんにちは。少々身辺に雑事あり、歌会のほう、失礼いたしております。

今日、藤沢周平が書いた、長塚節の伝記的小説「白い瓶」というのを読んでいたのですけれども、あとがきを清水房雄さんが書いていました。
新聞の選者をされているので、いつも見ていますが、老いの歌、それから戦争の回想の歌を採られることも多いようです。どちらもだいじなジャンルと思います。
「心理詠」という言葉に対しては、吉田正俊という歌人の合評などではじめて知りました。とても興味を惹かれているところです。

引き続き楽しみに拝見させていただきます。
えつこさん
こんにちは。歌会のほうは、いつでもお時間のあるときにいらして下さい。

吉田正俊さんは、わたしが子供の頃何度も家にお出でになったようです。父が歌詠みでしたから。

ログインすると、みんなのコメントがもっと見れるよ

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

切磋短歌 更新情報

切磋短歌のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング