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謎が謎を呼ぶ…イングランド代表が肌身離さず持ち歩く「ライオンのぬいぐるみ」がユーロで話題に

2016.06.11

前日練習では、ストーンズがレオを背負う姿が目撃された [写真]=Getty Images

 クリス・スモーリングが、「ライオンのぬいぐるみ」を肌身離さず持っている−−−−。イングランド国内でそんなことが大きな話題を呼んだのは、ユーロに向けてイングランド代表がフランス入りした6日のことだ。

 センターバックの彼が巨体に似合わぬ可愛らしいぬいぐるみを抱えて歩く姿は瞬く間にSNSで話題となり、もしかしてコレがないと眠れない? ……という憶測も流れたが、そうではなかった。空港でも、宿泊先のホテルでも、ふわふわのライオンはチームの集合写真にこっそり紛れこんでいる。キャンプ地で行なわれた最初のトレーニングでも、黙って選手たちを見守る姿があった。“彼”は「非公式マスコット」という役職を与えられた、代表チームのれっきとしたメンバーだったのだ。

 当初、『デイリーメール』紙はぬいぐるみがチームの「お守り」なのだと予想した。ラグビー界ではブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ(イングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランドの選抜チーム)に、幸運のお守りとしてライオンのぬいぐるみを大会に持ちこむ伝統があるからだ。また、ツール・ド・フランスでも、ステージ優勝した選手に小さなライオンが贈られる。これはスポンサーを務めるフランスの銀行のマスコットキャラなのだが、ファンにはすっかりハッピーアイテムとしてお馴染みだ。

England v Portugal - International Friendly

イングランド代表のキャンプ地にも同行する謎のぬいぐるみ [写真]=Getty Images

 8日、記者会見に出席したスモーリングは、記者からこの件について聞かれてこう話した。

「あまり多くは言えないんだ。大会中、数人の選手がぬいぐるみを持ち歩くことになる。言えるのはそれだけさ。今は僕だが、数日後には他の誰かが持っているところを見るだろうね」

 次は誰? そう聞いても、「選手たち次第だね」と歯切れの悪い答え。そうこうしているうちに「ライオンについての質問はもう十分でしょ!」と話題は打ち切られてしまった。

 ならば別の選手に、とダニエル・スタリッジに直撃しても、「この件は秘密なんだ」と口を閉ざすばかり。

「マスコットは、選手たちでフランスに連れて行くことを決めたのさ。(名前は?)みんなレオと呼んでいるよ。でも、ワッザ(ウェイン・ルーニー)に聞いてみないといけないな」

 そうヒントをくれたのはカイル・ウォーカーだが、謎は深まるばかりである。

 現地記者たちの総力(?)取材で徐々にわかってきたのは、「レオ(仮名)」はキャプテンであるルーニーの発案でチームに加わったらしいということ。選手たちは大会期間中、交代でレオの面倒を見る決まりになっており、世話係はルーニーが率いるベテラン選手たちの“委員会”によるご指名で決められる。また、レオが“負傷”したり、行方不明になったりした場合にはルーニーから「厳しい罰」もあるとかないとか。『ミラー』紙はこの“罰ゲーム”が見たい一部選手たちがレオの“誘拐”を企てているとも報じている。

England Training Session & Press Conference

レオの名づけられたぬいぐるみは選手が交代で世話をするようだ [写真]=Getty Images

 さらに、スリーライオンズの愛称にあやかって、「レオ」の他にもキットマン(用具係)チームが持ち運ぶ「キットカット」、試合日に控え室で選手を鼓舞する「レニー」と、計3頭のライオンがチームに帯同しているようである。

 この3頭は、単なるラッキーチャームではなさそうだ。どうやら、チーム最年長のルーニーは、こうした遊び心でチーム内コミュニケーションを促し、絆を強めることを狙っているようなのだ。過去のイングランド代表には、クラブ別の派閥があると根強く囁かれてきた。たとえば敵対心が強いマンチェスター・ユナイテッド組とリヴァプール組は食事のテーブルがハッキリと分かれ、普段からほとんど口もきかず、それが結束の妨げになっていたと証言する代表OBも少なくない。

 国の誇りを懸けた決戦を前に、取るに足らない話題なのかもしれない。しかし、選手たちがちょっとした“秘密”を共有し、記者やファンを翻弄して楽しむ様子からは、チームの和気あいあいとした様子が感じ取れる。それに、裏を返せばこうした話題で盛り上がるということは、今のイングランド代表に大きな問題がないということでもある。こうした一体感や雰囲気のよさを、ピッチに持ちこめたなら……。レオたちは、本当に幸運を運ぶ存在になるかもしれない。

 なお、ロシア戦に向けた10日の前日練習では、ジョン・ストーンズがレオを背負ってチームバスから下りてくる姿が目撃された。スモーリングの後任として、初戦の地マルセイユにレオを連れていく役目はこの22歳に託されたようだ。“世話係”の選考基準はいまだ明らかではないが、その変遷を見ながら予想してみるのも、大会のちょっとした楽しみ方かもしれない。

(記事/Footmedia)

By Footmedia

「フットボール」と「メディア」ふたつの要素を併せ持つプロフェッショナル集団を目指し集まったグループ。

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