薬局・病院から食品・化粧品業界まで! 薬学部卒業生のお仕事

大学の薬学部は、「薬剤師になるために学ぶところ」というイメージが強い。6年制の薬学部を卒業した後、薬剤師国家試験に合格して国家資格を取得すれば、保険薬局や病院などで「薬剤師」として働くことができる。
 
実際、薬学部の卒業生の主な進路は、保険薬局・ドラッグストア・病院が大半。
 
しかし、実は薬剤師が活躍できるフィールドは、それ以外にもさまざま。
 
さらに大学によっては6年制ではなく4年制の学科もあり、薬学の知識をもったスペシャリストとして企業に勤務する道もあるという。
 
そこで、新しい薬学教育を提案している城西大学・薬学部の杉田義昭教授に「薬剤師が活躍できるフィールド」と「薬学部の多様性」について聞いてみた。
 

薬局・病院だけでなく企業で働いたり、公務員にも!

 
「薬剤師」というと、保険薬局や病院で薬の調剤をする仕事が一般的。しかし、白衣を着て、処方箋に基づいた薬を患者に提供するだけが薬剤師の仕事ではない。
 
薬局・病院から食品・化粧品業界まで! 薬学部卒業生のお仕事
 

「卒業生の就職先で最も多いのは保険薬局ですが、病気やケガの治療を病院だけで行うのではなく、地域の医療機関や薬局などが協力して患者のケアをする『地域医療』が広がる中、薬剤師の仕事内容も増えています。
 
2016年度の診療報酬改定で、『かかりつけ薬剤師制度』が施行されました。この制度によって、ただ薬の調剤や販売をするだけでなく、市販薬も含めた飲んでいるすべての薬をチェックして相談に乗ったり、患者宅を訪問して飲み残しの薬がなくなるようアドバイスしたりできるようになりました。
 
また、ドラッグストアでは、例えば『最近、疲れやすい…』という悩みに対して、詳しい症状を聞きながら、ビタミン・クエン酸のサプリメントやハーブの薬用入浴剤を勧めるなど、健康食品や介護用品などのアドバイザーとして、地域の人々の健康増進をサポートする大切な仕事も担っています」

 

在宅医療や、自分の健康は自分で守るセルフメディケーションが推進されている今、保険薬局や病院、ドラッグストアで働く薬剤師の仕事も多様化しているという。
 
さらに、薬剤師が活躍できるフィールドは、ほかにもある。
 

「製薬企業に就職すると、新薬の研究開発はもちろん、医師に自社の薬の情報を収集・提供するMR(医薬情報担当者)という専門職があります。
 
また、国家公務員になって、厚生労働省で麻薬取締官を務めたり、警察・保健所・役所の保健課の職員などでも、薬剤師の知識を生かすことができるんです」

 
薬局・病院から食品・化粧品業界まで! 薬学部卒業生のお仕事
 
「薬剤師」の国家資格を取得すると、医薬品だけでなく、下記のような専門資格も得られるため、活躍のフィールドが幅広いという。
 

○医薬部外品・化粧品または医療用具の製造(輸入販売)所の責任技術者
○毒物劇物取扱責任者
○薬事監視員
○麻薬管理者
○食品衛生管理者

 

食品・化粧品業界、管理栄養士として働く道もある

 
4年制の薬学部の場合、「薬剤師」の国家資格にはこだわらず、薬学の知識をもったスペシャリストとして、企業や研究所、国家公務員・地方公務員に活躍の場を広げていくこともできる。
 
今回取材した城西大学では、「薬学科」、食品・化粧品・医薬品のプロデューサーを養成する「薬科学科」、栄養指導ができる管理栄養士を育成する「医療栄養学科」の3学科があり、それぞれの学科と連携したカリキュラムの授業を展開。幅広い知識をもった人材を育成する取り組みをするなど、大学の薬剤師育成に関する向き合い方にも変化がある。
 

薬局・病院から食品・化粧品業界まで! 薬学部卒業生のお仕事
 

「今、食品や化粧品メーカーでは、薬学の知識を兼ね備えた人材が求められています。
 
例えば、食品と薬の両方の性質をもつスポーツドリンクやシリアル、クッキーなどの機能性食品は、安全性や有効性を調べるために薬学が必須。化粧品に含まれる化学物質が皮膚の中でどういう働きをするのかなど、薬を科学することは新商品の研究開発に生かせます。
 
薬科学科では、海外の大学へ留学して薬学の専門科目を英語で学ぶことで、世界のリーダーとして活躍する、病気や薬に強い臨床検査技師を目指すこともできるんですよ。
 
また、チーム医療が広く浸透している病院で働く管理栄養士にとって、薬学の知識があると病気の治療意図を読み取ることができ、より効果的な栄養指導に役立ちます。
 
管理栄養士というと食品企業や給食を提供する施設で働くイメージがありますが、医療栄養学科の卒業生の約3分の2は医療系に就職。保険薬局やドラッグストアでは管理栄養士の資格手当がつくこともありますね」

 

 
薬学部で学ぶと、保険薬局・病院はもちろん、企業に勤めたり、公務員になるなど、さまざまな働き方がある。また、医療に限らず、食品・化粧品など、幅広いフィールドに活躍の場が広がっていく。
 
同じ薬学部でも、「4年制か6年制か」また「どんな授業が受けられるのか」によって、卒業後の進路が変わってくるので、進学先を選ぶときに、自分はどんな仕事をしたいのか、しっかり考えてみよう。
 
 
*もっと知りたい人はコチラ*
 
◆薬の調剤をはじめ、薬品の研究や開発も行う【薬剤師】
http://shingakunet.com/bunnya/w0033/x0454/
 
◆医師に薬品の情報を提供する【医薬情報提供者(MR)】
http://shingakunet.com/bunnya/w0033/x0456/
 
◆研究機関、大学の研究室などで開発・研究を行う【製薬開発技術者・研究者】
http://shingakunet.com/bunnya/w0033/x0457