ニュース 2016.06.08. 06:30

「相手と同じ目線に立って指導」 渡辺久信SDが育んだ台湾との良好な関係

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西武の渡辺久信SD

元西武の郭泰源氏率いる、台湾・統一ライオンズと今夏にコラボ


 西武は今夏、「中華職業棒球大聯盟」に所属する「統一セブンイレブン・ライオンズ」との友好記念試合を開催することを発表した。

 今季は郭俊麟、C.C.リー、呉念庭と3人の台湾出身の選手が西武でプレーする。12球団のなかでも、台湾と深い繋がりのある球団というイメージが浸透している。

 7月30、31日には台湾・台南での統一ライオンズの主催試合で「埼玉西武ライオンズデー」を行い、日本では8月30、31に西武プリンスドームで「統一セブン-イレブンライオンズデー」を実施。様々なコラボイベントを行うとのことだ。

 西武はすでに4月24日のホームゲームで“台湾デー”と銘打ち、台湾プロ野球のマスコット、台湾獅子舞による伝統芸能を披露するなど大いに球場を盛り上げた。過去から続く台湾との良好な関係をさらに進化させて、ともに発展していこうという意志が見てとれる。

 そんな関係のきっかけとなったのは、やはり85年から97年まで西武に在籍し、「オリエント・エクスプレス」と呼ばれた郭泰源氏の活躍だろう。日本球界通算で117勝を挙げ、西武の日本一にも数多く貢献した右腕だ。引退後はチャイニーズ・タイペイの監督、ソフトバンクの投手コーチなどを歴任し、昨季から統一ライオンズの監督としてチームを率いる。

 そしてもう一人、現在は球団のシニアディレクター(SD)として辣腕を振るう渡辺久信元監督も台湾野球界との関係を語る上で欠かせない人物だ。


 西口元投手のコーチ修行を渡辺SDがサポート。アジアに野球をさらに広げたい


 渡辺SDは1998年にヤクルトで現役を引退。その後、当時西武の監督を務めていた東尾修氏のすすめもあり、嘉南勇士(当時)の投手コーチとして指導者としてのキャリアをスタートさせた。

 しかし、さすがに言葉が通じず困りはてて郭泰源氏に通訳の手配をお願いしたところ「言葉が通じないなら、投げるところを自ら見せて身をもって教えればよい」とアドバイスを受け、急遽選手兼任コーチとして現役復帰することになった。

 2008年にライオンズの監督として日本一になった直後に出版された著書『寛容力』(講談社刊)では、ある試合で選手にサイドスローを教える手本として試合でサイドスローから投げたら完封してしまったというエピソードも披露している。

 また、台湾でのコーチ時代に「上からではなく、選手の目線に立って指導することの大事さに気付き」、対話などでコミュニケーションをより多く重ねることで選手を深く知り、彼らの力を伸ばすことができるようになったという。

 著書の冒頭で「指導者としての原点は台湾での3年間にある」とはっきり語っている。台湾選手の自宅にお呼ばれした際には、何か分からないまま焼いた肉を提供され、「これおいしいなあ、この肉は何?」と聞いたら「それ、ネズミですよ」と言われて驚いたという体験を披露するなど、自らコミュニケーションを取り、相手の懐に飛び込んでいった。

 そういった彼の真摯な姿を見た台湾の野球関係者が、渡辺SDのいるライオンズに共感を覚えたのも自然なことだったのかもしれない。

 今季開幕前の3月7日には、昨年限りで21年にわたる現役生活を終えた西口文也さんが統一ライオンズの臨時コーチと言う肩書きで今後指導者としての経験を積むための第一歩を踏み出している。

 現在は球団編成部員という肩書きの西口さんだが、報道によると台湾に到着した当初は、渡辺シニアディレクターも現地で彼をサポート。さっそく合間をぬって西口臨時コーチとともに「夜市」を訪れたそうだ。

 嘉南勇士コーチ時代も現地の選手の考え方や育ってきた環境を肌で感じるために、積極的に街を歩いたり、選手との交流を意欲的に行ってきた。

 “選手達の目線と同じ高さに立って教える経験が、指導者としての大きな糧になる”という自らの体験を西口氏に伝えようとしたのかもしれない。
 
 選手の獲得のみならず、イベントなどを通じても日本と台湾の野球界をつなげていこうという埼玉西武の試みはこういった過去からの積み重ねの延長線上にある。

 今後もこの良好な関係がアジアの野球発展に貢献していくか注目していきたい。

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